特別会計と霞ヶ関埋蔵金
長岡哲生『極秘資金』講談社(0801)では、財政法第44条及び第45条の規定が詐欺の道具に使われた。
再掲すれば、以下のような条文である。
第四十四条 国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。
第四十五条 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めをなすことができる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO034.html
ここでいう特別資金、特別会計(いわゆる特会)に関連して、霞ヶ関埋蔵金という言葉が議論になった。
国の予算には、一般会計と特別会計とがある。
特別会計とは、林野業や治水事業など特定の事業を行うために設けられる事業特別会計や、特定の資金を運用するために設定される資金特別会計などがある。
一般人にはあまり接する機会のない仕組みである。
だから、基幹産業を育成するための特別資金が存在すると言われれば、そういうものもあるかも知れない、と考えてしまっても、あながち非常識とはいえないだろう。
霞ヶ関埋蔵金とは、この特別会計の中に積立金があって、財務省が資金を隠している部分がある、とするものである。
資金特別会計(財融特会)と外国資金特別会計(外為特会)に、多額の埋蔵金が眠って(埋まっている)のではないか。
もし、そういうものが存在するならば、増税の前にそれを出すべきだ、という意見が出てくるのは当然である。
財融特会は、債券(財投債)を発行して調達した資金を、政府系の金融機関や地方公共団体を通して、零細企業などに貸し付ける仕組みで、貸付によって得られる利息収入や運用益と財投債発行費用との差額を、金利変動準備金として毎年積み立てることになっている。
金利変動準備金とは、将来の金利変動によって損失が発生することに備えるための積立金である。
2007年度末に、約17兆9千億円になると見込まれている。
外国為替相場の安定化を図るなどの目的の外為特会にも、同程度の積立金が蓄積されているといわれている。
埋蔵金の実体とは上記のようなものであるが、それが存在するか否か、論争があった。
2007年12月に、当時の額賀財務相が、「特別会計の中の積立金に、埋蔵金などというものはない」という財務省の立場から、埋蔵金説を一蹴した。
準備金は、法律に定められた目的を達成するために、所定の手続きに基づいて積み立てられたもので、掘れば出てくるイメージの埋蔵金などではない、というのが財務省の立場である。
霞ヶ関埋蔵金をめぐっては、自民党の中にも、意見の相違があった。
与謝野馨経済財政担当相を代表とする財政再建論者は、財政再建のためには消費税のアップなどの増税が必要であるとし、一回限りしか使えない積立金を、恒常的な支出に用いるべきではない、とした。
これに対し、中川秀直元幹事長らの成長重視派は、積立金の活用を主張したる。
このような論議があること自体、その実態が曖昧であることを示しているともいえよう。
その曖昧さが、「M資金」伝説などを生む1つの土壌になっているのではなかろうか。
いずれにしろ、どちらかが一方的に正しいということはあり得ないだろうから、政策ミックスを考えるしかないのだろうが、その前提として、特別会計はもっと透明なものにすべきである。
族議員や官僚が抵抗しているらしいが、そういう時代は既に終わっていると考えるべきだろう。
小泉政権の時の財務大臣だった塩川正十郎氏が、「母屋(一般会計)でおかゆをすすっているのに、離れ(特別会計)ではすき焼きを食べている」と言ったことがある。
それから既に何年も経っているのに、一向に透明度が増したようには見受けられないように思う。
反対論も多く、迷走した定額給付金の財源には、この霞ヶ関埋蔵金が充当されるらしい。
ということは、「あるか無いか」ということに関しては、「ある」ということになるのだろうか?
定額給付金は、果たして経済効果があるのか?
かつての地域振興券は、消費喚起効果が期待されたほどなかったというのが定説である。
定額給付金もほとんど同じ結果になるだろう。
そういう用途に、積立金を充当するのは如何なものだろうか?
もし、積立金を使うとしたら、もっと効果のある使途があるだろうと考える(08年12月10日の項)。
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