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2009年1月24日 (土)

裁判員制度に関する素朴な疑問

裁判員制度というものが、今年から実施されることになっている。
WIKIPEDIA(09年1月22日最終更新)の解説を抜粋してみよう。

市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。
裁判員制度が適用される事件は地方裁判所で行われる刑事事件のうち、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪など、一定の重大な犯罪についての裁判である。

2_52_7 裁判員は左図のようなプロセスを経て選任される。
候補者名簿に記載された場合は、12月ごろまでに通知があるということだから、今年の裁判員候補者には既に通知が届いているということになる。
裁判員候補者名簿に記載されるのは、毎年約29万5000人で、352人に1人の確率であり、実際に裁判員となる確率は5000人に1人だという。
まあ、事実上は実際に裁判員になる可能性はほとんどない、といえる。
ある人が裁判員になる確率が小さくても、必ず誰かが選任されるとすれば、やはり他人事とすべきではないのだろう。
しかし、私自身を顧みれば、現時点ではまったく他人事というのが率直なところである。
何か通知が来たら、その時に真面目に考えよう……。
おそらくは、多くの人がそう考えているのではなかろうか。

裁判員には、出廷義務や守秘義務が課せられる。
裁判員は、事実の認定、法令の適用、刑の量定について裁判官と共に合議体を構成して裁判をする権限を有する。
守秘義務は、評議の経過やそれぞれの裁判官や裁判員の意見やその多少の数およびその他職務上知り得た秘密を漏らしてはならない、ということで、この義務は生涯にわたって負うということになる。
それにしても、なぜこんな制度が導入されたのだろうか?

世論調査では、裁判員として参加したいか、という問いに対して、以下のような回答だった(2006年12月時点)。
・参加したい……5.6%
・参加してもよい……15.2%
・あまり参加したくないが、義務であるならば参加せざるを得ない……44.5%
・義務であっても参加したくない……33.6%

つまり、積極的に参加したい、とする人は殆どいないということだ。
私も、判決に違和感を持つことがないわけではない。
例えば、福岡市の元職員の飲酒運転に関し、危険運転罪の成立を認めなかった判決を「非常識な判決」としたことがある(08年1月9日の項)。
だから、裁判官に、もっと社会の実相を知ってもらいたいと思う。

しかし、だからといって、「市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映させる」ために、市民が裁判に参加することがいいのかどうかは別問題である。
仮に裁判員に選ばれたとしたら、出廷義務や守秘義務が大きな負担になるだろうことは容易に想像できる。
その負担を越えるメリットが得られるのか?

そもそも、司法試験は、最も難しい資格試験として知られている。
われわれは、難しい試験を通った人だからということで、法曹人を信頼している。
もちろん、世には悪徳弁護士なとと呼ばれる人もいないわけではないけれど、まあ基本的には弁護士ならば信頼するだろう。
そして、司法的判断には、高度の知見が必要になると考えている。
司法試験に合格した後も、一定期間の研修が課されていることも知っている。

市民の場合はどうか?
確かに、司法以外の社会生活に関しては、経験豊富な人も多いだろう。
しかし、選挙権を有する者から無作為で抽出するとなると、その人のバックグランドに関しては、何も担保されないことになる。
一方、なんらかの基準で作為的に選ぶとすれば、その基準自体をどう考えるかが、一義的には決まらないだろう。

今の制度は、もちろん見直しも想定されているが、そもそも市民が裁判に参加して得られるメリットが、例えば市民的常識を反映させるということであるならば、裁判員制度などではない方法も考えられるのではなかろうか。
少なくとも、私は、人を裁くことに参加したいとは思わない。
「義務であっても参加したくない」派であるが、現実には「義務であるならば参加せざるを得ない」ということになるだろう。
つまり、不本意ながら評決に係わることになるわけで、そんなことでいいのだろうか?

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