永田寿康元衆議院議員の自殺
ライブドアの粉飾決算事件に関連した衆院の予算委員会における、いわゆる偽メール事件で有名になった永田寿康元衆議院議員が、新春を寿いでいるべき3日に自殺した。
痛ましいことである。
何が永田氏を自殺を決意するまで追い詰めたのか?
命を粗末にすべきではないとは思うが、そういう選択をした人に対して、他人が否定しても仕方がない。
最終的には本人の判断の問題だと思う。
永田氏の履歴を見てみよう。
永田寿康元議員は愛知県名古屋市出身、1969年9月2日生まれの39歳。
慶應義塾志木高等学校、東京大学工学部物理工学科を卒業、
1993年に入省した大蔵省を1999年に退官し、2000年に衆院選で初当選したが
2006年にいわゆる「堀江メール問題」を引き起こし議員辞職していた。
http://gclip.blog57.fc2.com/blog-entry-1145.html
東大工学部から、大蔵省へというのは、完全なエリートコースとはいえないのかも知れない。
エコノミストとして有名な野口悠紀雄氏も、確か工学部から大蔵省への道を歩んだはずである。
野口氏の場合は、もちろん学者としての適性の方があったということだろうが、私の知る限りでは、中央官庁には、東大法学部以下、大学・学部による明瞭な序列があるらしい。
旧大蔵省などは、その典型であろう。
しかし、永田氏が、一般的なレベルでみれば、エリートの道を歩いてきたことは間違いない。
エリートは、とかく脇が甘くなりがちである。
永田氏もその例なのだろうか。
偽メール事件とは、永田元議員が、ホリエモンこと堀江貴文容疑者が、自民党の武部幹事長(当時)の二男に送金を指示した証拠として提示したメールが、ニセモノであったという事件である。
メールがガセだったことにより、武部幹事長周辺への追及は不発となった。
当時の民主党の前原代表は辞任し、永田元議員は議員を辞職して、一件落着となった。
2006年のことである。
また、永田元議員は、偽メール事件以外にも、国政報告会で、創価学会が不正な選挙活動をした、という偽りの発言をしたとして告訴され、千葉簡裁から名誉毀損罪で30万円の罰金の略式命令を受けていた。
偽メール事件の背景に、何があったのだろうか?
論理的には、メールが偽であった場合と、真であった場合の2つの可能性が考えられる。
経過的には、真であることが立証され得なかったので、偽と判断されたわけである。
もちろん、ある証拠が真であるか偽であるかが争われた場合、証拠を提示しようとする側に挙証責任があることはいうまでもない。
しかし、今でも、いわゆる郵政民営化を争点とした総選挙において、武部幹事長が堀江容疑者を精力的に応援していたTVの映像は、鮮明に思い起こすことができる。
堀江容疑者は、郵政民営化に反対する勢力のシンボル的立場にあった亀井静香氏に対する刺客として擁立されたのだった。
もちろん、だから堀江容疑者から、武部氏の二男への送金が指示された蓋然性が高い、などというつもりはない。
しかし、「そういうことがあるかも知れない」という環境の中で、偽メールが、永田氏の手に、真であるとして渡されたわけである。
メールが偽であるとしたら、誰がどういう目的で、永田氏に渡したのか?
当時の流れの中で、永田氏が、重要な証拠となり得ると判断する物件を入手すれば、それを公然化して追及の武器とするであろうことは、ほぼ100%確信できるだろう。
とすれば、公然化した時点で、偽であることが示されれば、永田元議員および関係者の信用は大いに失墜することも、ほとんど手の内を見るように明白だっただろう。
言い換えれば、永田元議員は、赤子の手をひねるが如くつぶされたわけである。
利害得失のない人間が、わざわざ偽メールを作るようなことはしないだろう。
偽であることが発覚することにより、メリットを得た(得ることが想定できた)人間は誰か?
推理小説じみた憶測をしても仕方がないが、謀略の臭いを感じる人は多いだろう。
永田氏は、一種のスケープゴートだったのではないか。
ライブドア事件は、現在も係争中である。偽メール事件以外にも不透明な部分が多い。
特に、2006年1月18日に、ライブドアと深い関係のあった野口英昭・エイチエス証券副社長(当時)が、沖縄のホテルで謎の死を遂げたことは、背景の不気味さを感じさせるものであった。
偽メール事件も含め、おそらく本当の「真」は、闇に閉ざされてオープンになることはないのだろう。
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コメント
永田寿康元議員の自殺については私もブログの題材にしました。
最初にニュースを聞いた時は、人の多くが新春を祝っている時に死出の旅立ちにたつとは気の毒とも思ったのですが、そういう心情的な面よりも、こちらの記事にある通り、今も不透明なままの政財界の尋常ならざる状態を、その自殺報道は、フラッシュバックの様に束の間映し出すかのようなことであった、という印象が強いものだという風に感じています。
国会でのこの人の野卑な野次の謂れを、‘完全なエリートコースとは云えない’、という文言により、察するに及ぶことが出来た様な気がしました。
投稿: 重用の節句を祝う | 2009年1月 9日 (金) 16時25分
重陽の節句を祝う様
いつも貴重なコメント、有り難うございます。
永田氏については、記事にしようか、すまいかかなり迷いました。
中川一郎、新井将敬、松岡利勝……。
政治家が自殺した場合には、何か隠された背景があるのではないか、とつい勘繰ってしまいます。
隠された背景があったとしても、表面に出てくることはないでしょうが。
遅ればせながら、Linksに追加させて頂きました。
投稿: 管理人 | 2009年1月 9日 (金) 17時50分
リンクに加えて頂き、恐縮ながら、嬉しいです。有難う御座います。
隠された背景があったとしても、表面に出てくることはない ・ ・ ・ ・ 頷かざるを得ない、究極のことばだと思いました。
投稿: 重用の節句を祝う | 2009年1月 9日 (金) 22時04分