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2009年1月28日 (水)

インターネット法廷の可能性

裁判に関する記事が続いたので、自然にその方面の資料に目が向き、山口宏・副島隆彦『新版 裁判の秘密』宝島文庫(0807)が目に止まった。
東京第二弁護士会に所属する山口弁護士の主張を、「もの書き職人」を自称する副島氏がまとめたものだ。
副島氏は、幅広い分野で活発に言論活動を展開している鋭い問題提起をしている人である。
山口弁護士が余りに多忙なため、そのような形で書籍にしたらしい。
山口弁護士が書類を作成するのは深夜になってからで、睡眠時間は3時間だという。

何故、そんなに忙しいのか?
それは、日本の裁判制度による部分が大きい。
私も、幸いにして自ら被告席に座ったことはないが、証人として出廷したことはある。
やはり、法廷は神聖な場所だと思うから、緊張する。
できれば余り関わりたくない場所であるが、出廷せざるを得ない。

上掲書のエピローグのところで、日本の司法制度に対するいくつかの提言がなされている。
その第一が、「一日も早くインターネット法廷を導入せよ」である。
裁判は、裁判所で行われるのが原則である。
裁判所は全国にあるが、訴訟が起きた地域での裁判所の法廷で行われる。
もちろん、病気で動けない人などの場合は、裁判官がベッドの傍らで尋問する臨床尋問なども行われるが、それは例外である。

弁護士が忙しいのは、この遠隔地で行われる裁判のためでもある。
山口弁護士が例示しているのは、例えば網走市の裁判所で裁判が行われるとすれば、網走まで出向くことになる。
そこで何をするかといえば、「期日を決めてくるだけ」ということだ。
もちろん、実際は、単に期日を決めるだけということではないだろう。
しかし、法廷で、裁判官から「準備書面を陳述しますか」と尋ねられ、頷くだけの仕事なのだ、と山口氏はいう。
準備書面が分かりやすく書いてあれば、それで済むことだという。

そして、次回の期日を決める。
裁判官と双方の弁護士の3人の日程を調整するわけだ。
もちろん、どこの事務所でも、書類はパソコンなどで作っているだろう。
しかし、最終的には、プリントした書類を綴じて、ホチキスで止めて割印を押して郵送するということをしている。
電話回線等の利用は不可だという。

このIT時代に、インターネットの利用が行われていないということだ。
書類や証拠をインターネットでやりとりすることを認めてくれれば、弁護士はもっと依頼人のために働ける、と書いている。
インターネットの利用などは、裁判員制度などよりも優先して実施されるべきではないだろうか。
弁護士が裁判所に出向くのは、「裁判の公開の原則」に基づくものだという。
準備書面の陳述の公開ということである。
しかし、傍聴席から準備書面の内容が読めるわけではない。
そもそも、通常の裁判では、傍聴人はほとんどいない。

裁判の迅速化というのは、大きな課題である。
山口氏の挙げている例では、オウム真理教の麻原彰晃の裁判である。
裁判に長時間かけていたら、裁判中に麻原が死んでしまうかも知れない。
麻原が何歳まで生きるかは神のみぞ知るところだが、60歳くらいで死んでしまうことは十分に考えられる。
60歳で死刑の判決を下しても、意味がないだろう。
もっとも、副島氏は、「あとがき」で、裁判の迅速化が問われていることから、日本の司法は注目度の高い麻原裁判は早くやってしまうだろうと予測している。

裁判に関係した人なら、裁判の迅速化そのものについては、賛成する人が多いだろう。
平成15年には、「裁判の迅速化に関する法律」も制定されている。
司法試験改革では、裁判の迅速化をするため、弁護士を500人から3000人にまで増やすとされ、法科大学院なども設置されている。
裁判員制度も裁判迅速化に応えるという面ももっている。

副島氏は、『属国・日本論』五月書房(0506)などで、アメリカの対日戦略に関して警鐘を鳴らしてきた人である。
「新版のためのあとがき」で、司法試験合格者の増員も、アメリカの要求によるものだと書いている。
日本に進出したアメリカの巨大法律事務所が、増員された弁護士を大量に雇用し、日本の法務や争訟をその事務所で扱うようにすることが目的だという。
金融ばかりでなく、司法の世界にもグローバリズムの波が押し寄せて来ているということらしい。

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