人口減少社会の到来とグローバル市場主義モデルの終焉
世界は、「100年に1度の危機」を迎えているといわれる。
IT技術と連動した金融工学の発展により、金融派生商品という実体のない「商品」が、グローバル化した市場で、マネーを吸引し、あげくは金融危機と呼ばれる状況を招来し、それが実体経済の不況へ拡大している。
それは、明らかに循環的な景気変動というよりも、構造的な変化を示していると考えられる。
とりわけわが国は、、「人口減少社会」という、今までに経験したことのない社会に直面している。
つまり、二重の意味で文明史的な転換点に位置しているということができる。
そういう時代に、マンガを読む(見る?)時間が足りないなどという人が総理大臣の座にいるという巡り合わせは、まことに皮肉なことではある。
それを云々するよりも、ここは、何よりも、自分自身の認識力を鍛えなければならないと考えるべきだろう。
超長期的な人口動態をみた場合、私たちの生きている時代は、きわめて特異的な性格を持っているということができる(07年8月17日の項)。
人口規模の超長期的な推計グラフを再掲してみよう。
わが国は、これから先、急激に人口が減っていくことが想定されている。
人口が減少するという事象は、歴史的にも初めてのことである。
厚生労働省が、12月31日に発表した平成20年の人口動態統計も、人口減少社会の到来していることを裏付けている。
日本在住の日本人人口は、出生数がわずかに増えたものの、死亡数が大幅に増えて、自然減が過去最大の51,000人になる見通しである。
自然減は、平成19年に続き2年連続で、日本社会は本格的な人口減少社会に入ったといことになる(グラフは、産経新聞09年1月1日)。
出生数は、出産適齢期の女性人口と合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の平均数の推計値)の積で決まる。
合計特殊出生率は、長期的に低落傾向にあるが、平成20年は、19年の1.34よりわずかに上昇して1.36程度となる見通しである。
一方で、死亡数は高齢化の進展で増え続けている。
出産適齢期の女性人口が減り、合計特殊出生率も大きな変動が見込めないので、出生数は伸び悩む。
高齢化のさらなる進展によって、死亡数は増え続け、自然減は拡大し続ける見通しである。
人口は、一国の総需要を決めるもっとも基本的な要因である。
私たちは、経済規模が拡大するのが当然だと思える社会を生きてきたが、人口減少社会の到来によって、経済の量的な規模も自ずから制約される。
現在の日本社会は、金融資本主義という経済モデルからの転換と同時に、人口増大社会から人口減少社会への転換という課題を背負っているわけである。
私たちは、量的拡大ではなく質的充実を志向すべき時代を迎えているといえよう。
どのような社会観をもってこれからの時代を生きていくか、自分に対する今年の課題としたい。
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