「定額給付金」をめぐって
麻生内閣の支持率が急降下しているらしい。
例えば、読売新聞の12月調査では、20.9%の支持率で、前月に比べほぼ半分である。
読売といえば、どちらかと言えば、自民党あるいは保守勢力に好意的な立場とみていいだろう。
世論調査に、そういう社のスタンスが反映するものかどうか、社説などとの関係もあるから、無関係ということもないだろうと思う。
それにしても、この水準は、政権維持を危うくする数字である。
いよいよ「自民党の終わりの始まり」だろうか?
「自民党をぶっ壊す」と言った小泉純一郎氏の発言は、時限爆弾だったということだろうか?
それにしても、いち早く引退表明してしまった小泉氏の風見鶏ぶりは、さすが、と評価すべきなのだろうか?
さらに言えば、私のように、最初から全く支持していなかった人間にとっては、「期待通りの内閣」ということになるのだろうか?
不支持が増加している要因として、読売新聞は以下を挙げている。
①追加景気対策を盛り込む第2次補正予算案の延長国会への提出を見送ったこと
②定額給付金の所得制限をめぐる首相発言の揺らぎ。約2兆円の巨費を投じる政策で、閣内不統一も露呈した
③「医師は社会的常識が欠落している人が多い」といった首相の失言や、漢字の誤読
③の要因に関しては、「医師が社会的常識が欠落していることは、患者の常識」というような意見もあり、あながち見当外れとも言えないようである。
しかし、一国の最高責任者としては、当然、もう少しTPOをわきまえて発言すべきであろう。
漢字の誤読については、マンガ愛好家を自認する総理大臣の、国語力を露呈したものと考えざるを得ない。
麻生氏は、「新聞は読まない」と語っているようである。
以下のようなブログ記事がある。
9月30日付の「総務大臣麻生太郎の あっ、そうだろう!」で
麻生は、「私は、新聞はできるだけ見るだけにして読まないようにしています」と記している。
理由は、「新聞を読むと情勢判断を誤るから」。
http://ameblo.jp/seijika/entry-10005274669.html
「新聞を見るだけにして読まない」というのは、マンガ愛好家らしい発言ではある。
しかし、実は「読めない」のではないか、という人すらいる。
一時期、「空気読めない」の表記として「KY」が流行ったことがある(08年2月14日の項、2月17日の項)。
最近は、「KY=漢字読めない」ということらしい。
あるいは、新聞記事に情勢判断が左右されるとしたら、その見識を疑うべきということではないだろうか。
かつて、産経新聞が「新聞を疑え」と逆説的なコピーを掲げたことがある。
新聞記事を批判的に読むべきなのは、言うまでもないことだと思う。
そして、産経新聞は、まさに批判的に読む訓練をするのに格好の材料である。
産経新聞は、オピニオンが明瞭なメディアである。
多くの場合、朝日新聞とは対蹠的な見解が載せられ、自ら比較検証記事も掲載している。
朝日の見解と産経の見解とを対比してみれば、「ものの見方・考え方」の訓練になると思う。
新聞は、判断を得る材料ではなく、判断をするための材料を得る媒体である。
麻生氏は、新聞を読まないで、マンガを読んで判断するというのだろうか?
だとしたら、トンチンカンな(としか思えない)発言も、むべなるかな、というものであろう。
②の定額給付金については、そもそも、政策論として如何なものかと思う。
本質的には選挙対策としてのバラマキというものなのだろうが、世論調査でも、施策として評価しない、とする人の方が、2/3以上に上っている。
http://vote.nifty.com/individual/4891/19924/index.html
これでは、選挙対策としても逆効果というものだろう。
しかし、2兆円というのはとてつもない巨費である。
平均的な世帯は、1人12,000円程度の給付金になるという。
給付金といっても、もともとは自分たちの納税したお金だから、何となく「給付する」と言われるのも釈然としないが、多くの労力をかけて集めた税金を、また労力をかけて配分しようとすること自体が不可解である。
最初から、その分徴税しなければ良かったのではないか、ということにならないか。
しかも、所得制限を設けるか否かでムダな時間を費やした。
最終的には市町村の判断に委ねるということのようで、そのガイドラインが、年収1,500万円らしい。
年収1,500万円の人の割合がどの位なのか正確には分からないが、その区分けをして給付するための費用が800億円にもなるらしい。
http://ohyama.way-nifty.com/days/2008/11/post-e4d4.html
まったくもって何をしようとしているのか、という気がするのは私だけではないだろう。
同じ2兆円を使うのならば、もっと有効な方策があるはずである。
例えば、「医師・作家。1948年6月28日 東京生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。」という自己紹介文のある鎌田實さんのブログには、以下のように書かれている。
そもそも、1兆5000億円を医療に、5000億円を介護・福祉に使い、2兆円を有意義に使えば、医療崩壊も介護崩壊も防ぐことができるはずだ。
そうすれば、2200億円の社会保障費の抑制は継続していいのだ。
財政再建の旗を振り下ろし、2兆円を無駄にバラまくのと、財政再建を継続しながら、緊急経済対策として2兆円を安心の国づくりのために使うのとでは、大きな違いだ。
http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-73d0.html
「医師の中にも社会常識豊かな人がいる」などと言うと叱られてしまうだろうけど、おおいに傾聴すべき意見ではないだろうか。
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コメント
毎日毎日、ニュースを見ていると憂鬱な気分になってしまいます。情けない政治に振り回される哀れな国民。国民はもっともっと怒るべきです。自民党政治はもうこりごりですね。
投稿: 山の友 | 2008年12月16日 (火) 11時42分
山の友さん、こんにちは。
先日は流会になってしまって残念でした(止むを得ない事情ですが)。
まあ、余り腹を立てずに暮らそうと思っているのですが、少しひどすぎると思いますね。
怒りをどういう形で表現するかですね。
投稿: 管理人 | 2008年12月16日 (火) 17時07分