珍説・奇説の邪馬台国…②「新潟」説(桐生源一)
桐生源一氏は、新潟県栃尾市で1941年に生まれた。
明治時代に創業した書店の跡取りだったが、現在は複写機・文房具販売会社「玉源」を経営している。
栃尾市は、平成の大合併により、2006年1月1日に長岡市に編入されて消滅したが、桐生氏は、その栃尾が邪馬台国の中心だったという説を提唱している。
旧栃尾市は織物の町として知られていた。
第11代垂仁天皇の皇子が栃尾郷高志の国造となり、その妃が守門の天然繭から紬を織ったのがはじまりというから歴史は古い。
また、名水百選に選ばれた「杜々の森」の清水も有名で、この湧水で仕込んだ銘酒「越の景虎-名水仕込大吟醸」は、酒飲みに知られているという。
もちろん、新潟県は、銘酒の宝庫ともいうべき土地柄である。
「魏志倭人伝」に、倭人が「人性酒を嗜む」という記述がある。倭人は生来酒が好きだということだ。
東夷伝の中では、倭以外には、「民族性として酒が好き」というような記述は、弁辰条に、「俗は歌舞・飲酒を喜ぶ」があるくらいである。
特記されるような「酒好き」とは、どのような事情があったのだろうか。
岩田一平氏には、『縄文人は飲んべえだった』朝日文庫(9504)という著書がある。
つまり、縄文人は、倭人伝の記すような「飲んべえ」だったということである。
縄文人は南方系の旧モンゴロイド、弥生時代以降に日本列島に渡来してきたのは、北方系の新モンゴロイドで、この北方系の新モンゴロイドの中に、下戸の遺伝子を持った人がいたのではないか、というのが岩田氏の説である。
縄文人は、どんな酒を飲んでいたのか?
青森市の山内丸山遺跡から、ニワトコを中心とした果実の種子が圧縮されて残っている固まりが出土した。
人為的に果実を搾った後のカスを捨てたのではないか、と考えられ、発酵した果実や酒が好きなショウジョウバエの死体が同時に見つかったことから、縄文酒の物的証拠ではないか、と考えられた。
岩田一平『珍説・奇説の邪馬台国』講談社(0004)には、1998年に、国立歴史民俗博物館の辻誠一郎助教授(当時、古生態学)が、ニワトコの醸造実験に成功したことが記されている。
北陸地方は、古代において、高志(越)と呼ばれた。
高志国のセンターは新潟県の中越地方だったが、高志国と邪馬台国とはどういう関連性を持つか。
古田武彦氏が、「邪馬臺国」ではなく、「邪馬壹国」とすべきだと主張したことについては既に触れた(08年11月18日の項、19日の項、20日の項)。
「邪馬壹国」をどう発言するか?
ネイティブ新潟人は、「イ」と「エ」の区別がつかない、とネイティブ新潟人の1人である桐生さんは言う。
「邪馬壹国」は、ヤマイツ国であり、新潟人にとってはヤマエツ国ではないか。
10世紀の『和名抄』では、旧栃尾市の辺りは夜麻郡と記されている。
春秋戦国時代、越が呉を倒すが、楚に滅ぼされる。
越の難民は、ボートピープルとなって、各地に流亡した。
南に行った越人は、越南(ベトナム)人となり、北陸に流れ着いた越人は、夜麻越(ヤマエツ)人となった。
「魏志倭人伝」には、卑弥呼の跡を継いだ壱与が、魏に孔青大勾珠などを朝貢したとある。
孔青大勾珠とは何か?
ヒスイの勾玉ではなかったか、と考えられている。
ヒスイは、古代より珍重されてきた鉱石であるが、日本列島における産地は糸魚川付近に限られている。
フォッサマグナの北端であるが、プレートの巨大な圧力によって、岩石が熱や圧力によって変成し、希少岩石が生成するらしい。
三内丸山遺跡から出土した大珠も、糸魚川産のヒスイだった。
壱与は、糸魚川産のヒスイを魏に献上したのではないか。
とすれば、邪馬台国が北陸にあったとしても、不自然ではない。
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コメント
三国志に書かれている文字を現代日本語で発音しても無意味です。1800年前の著者が使っていた古代中国語(西晋)で
発音しない限り、真相には近づきません。「ヒミコ」も同様です。
投稿: xx | 2011年10月27日 (木) 14時47分
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投稿: スーパーコピー商品 | 2020年5月17日 (日) 01時19分