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2008年12月31日 (水)

珍説・奇説の邪馬台国・補遺…③「八幡平」説(鯨統一郎)

邪馬台国の所在地論争をサカナにして、エンターテイメント小説に仕上げたのは、鯨統一郎『邪馬台国はどこですか? 』創元推理文庫(9805)に収録されている表題作である。
この書には、他に、「悟りを開いたのはいつですか?」(ブッダ)、「聖徳太子はだれですか?」、「謀反の動機はなんですか?」(明智光秀)、「維新が起きたのはなぜですか?」、「奇蹟はどのようになされたのですか?」(キリスト)が収載されている。
つまり、歴史上の大きな謎をテーマにした作品集である。

表題作は、第三回創元推理短編賞の応募作で、最終選考まで残り、従来の歴史ミステリーの殻を破るものとして、大きな注目を集めたが、賞の性格上受賞を逃した作品である。
同賞の予備選考委員を担当した橋本直樹氏は、「解説」で、「邪馬台国はどこですか?」を目にした時の感想を、「『判定不能』というなんとも歯切れの悪いものであった」と率直に語っている。

どう歯切れが悪かったのか?
確かに面白いが、歴史ミステリーなのかどうか。
つまり、創元推理短編賞として相応しい作品なのかどうか。
二の足を踏んだ、という次第である。

主人公は、宮田六郎という30歳前後の、自称日本古代史が専門という正体不明の青年。
早乙女静香という某私立大学文学部の助手で、世界史専攻の27歳で女優にも引けをとらない美貌の女性と、掛け合い的に議論をする中でストーリーが展開する。
舞台は、カウンターだけの地下のバー。

話題が邪馬台国になる。
マスターの松永は、静香の上司の三谷教授に位置論を聞かれ、「感じとしては畿内でしょうか」と答える。
静香は九州説である。
この会話に割り込んで、宮田は、自分は東北説だと言う。

邪馬台国論争には、荒巻義雄氏の『新説邪馬台国の謎殺人事件』講談社文庫(9206)によれば、以下のような問題点がある。

A 韓国南岸に比定されている狗邪韓国が、なぜ『魏志倭人伝』では倭国北岸と書かれているか? 
B 帯方郡から狗邪韓国まで七千里とある謎。
C 最大の謎として、『魏志倭人伝』の記載では、距離と方角が現実に全然合わない。
D 邪馬台国まで、水行十日陸行一月とあるのはなぜか。陸行一月は非現実的数字。 
E 帯方郡より邪馬台国までの距離が万二千里あるというのはなぜか。 
F 倭が周旋五千里とあるのはなぜか。
G 『後漢書倭伝』になぜ、奴国が極南界にあると書かれているのか。 
H 倭国はなぜ会稽・東冶の東にあるのか。地図と不一致。
I 邪馬壹国(やまいちこく)が、なぜ後代の書では邪馬臺国(やまたいこく)と書き直されたのか。
J 卑弥呼の鬼道とはなにか。
K 邪馬台国よりさらに千余里海を渡った国はどこか。
L 女王国より以北、二十一か国の所在地は? 
M 日向・神武王朝のことがなぜ書かれていないのか。大倭(やまと)も同じ。 

宮田は、これらの問題点に関して、次々と明解な(?)な説明をしていく。
例えば、Jについては、以下の通りである。

鬼道は占星術。何故ならば、鬼と星は同類。諸星撤次『大漢和辞典』等で鬼の部を引くと鬼の名と星の名が多い。どれが鬼の名で、どれが星の名か区別がつかないくらいだ(井上靖の『十一月』という詩参照)。卑弥呼が「よく衆を惑わす」と書かれているが、「惑わす」は掴むの意味。掴の旁の国の旧字は國であり、中の或に心をつけたものが惑。つまり「惑」の意味は「心を掴む」。卑弥呼は占星術に長け、民衆の心をよく掴んでいた、という意味。 

また、Kについては、以下の通りである。

邪馬台国からさらに千余里海を渡った国は北海道。侏儒(=コビト)国はコロボックル。
「船行一年にして至るべし」とされている裸国、黒歯国はアメリカ(インディアン)。

して、結論は?

邪馬台国=八幡平

八幡平は、ヤマタイとも読める。

まあ、小説ではあるが、あまたある所在地論考でも、上記のA~Mのすべてに答えているものは少ないのではないだろうか。

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