トヨタ自動車が営業赤字に
日本を代表するトヨタ自動車が、21年3月期の連結業績予想を下方修正し、1500億円の営業赤字になる見通しである、と発表した。昨期、一昨期ともに2兆円超の営業利益だったから、まさに劇的な変化ということになる(グラフは産経新聞12月23日)。
昭和16年3月期に決算数値の公表を始めてから、営業赤字は初めてのことだという。
昭和16年といえば、1941年だから、67年前のことになる。
リーマンブラザーズが破綻したころから、「百年に一度の経済危機」が喧伝されているが、単なるレトリックではなかった、ということか?
確かに、世の中では急速に不景気風が強まっていることを実感する。
私の知り合いの経営者も、いっせいにディフェンシブな姿勢を取り始めているようだ。
おそらくミクロ的には正しい対応なのだろうけど、それでは世の中全体(マクロ)的には不景気を促進するだけだろう。
そもそも「百年に一度の危機」というのは、何を指標としているのだろう。
麻生首相も、「百年に一度の危機」を口にしている。
それではどういう対応策を取ろうとしているのか?
先ごろ、21年度予算の財務省原案が示された。
景気下支えのためと税収落ち込みを補填するため、いわゆる「埋蔵金」の活用を図るほか、国債の増発を行うことになっている。
財政再建路線からの転換を意味している、と理解すべきだろう。
果たして、「百年に一度の危機」に対応するため、財政再建路線と決別することは正しい選択なのだろうか?
私には経済の素養が乏しいので、よく分からない、としかいいようがない。
1つの指標として、原油価格を見てみよう(グラフは朝日新聞12月18日)。ガソリンを入れるたびに単価が下がっていることからも、原油価格が下落しているであろうことは推測できる。
為替が円高になっていることもガソリン価格が低下していることを後押ししており、生活者としては有り難いことではあるが、他人事ながらGSの経営者は大変だろうなあ、と思ってしまう。
もっとも、少し前の水準に戻っただけなのではあるが、乱高下する中で、完全に価格競争になっているのだから、さぞかしシンドイことだろうと察する。
私の友人の中にも、いち早く廃業してしまった人がいる。
WTIというのは、West Texas Intermediateのことであり、その価格が原油の国際価格動向に大きな影響を持っている。
国際取引での単位は1バレル(約159リットル)当たりの米ドル($/bbl)で表記される。
WTI先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)においてNYMEX Light Sweet Crudeとして取引が行われている。
WTI価格はこの取引価格で決まり、その価格は世界の原油価格の中で最も有力な指標であるとされる。
実際のWTIの一日あたり産出量は100万バレルに満たないのに対し、WTI先物の一日あたり取引量は100倍の1億バレルを超えている。
このWTI原油価格が、7月ごろをピークとして、急速に下落していることがグラフからも読み取れる。
思えば、ガソリン価格の急騰について記したのは、このブログを書き始めたばかりのころだった(07年8月11日の項)。
その時のグラフを再掲してみよう。以来、ガソリン価格はさらに騰貴していき、私の住む地域でも180円くらいまで上昇した。
前回給油したときは112円だったが、現在は110円を割っている。
これは現下の不況の1つの側面を示していると思われるが、この不況が、循環的な経済変動の一局面なのか、文明史的とでもいうべき大きな変化の局面に直面しているのか、それは誰にも分からない。
しかし、私は、自動車や石油に象徴されるライフスタイルが、否応なく転換期を迎えているのではないだろうか、という気がする。
私たちの生きた時代は、まさに自動車や石油を代表選手とする時代だった。
私が最初に勤務した会社は、石油化学を業とするものだったし、その会社に入社した同期の人たちは、競って、そして生活費のかなりの部分を投じてクルマを購入した。
どういうクルマに乗るかは、端的にその人の価値観や美意識を反映していたと思う。
しかし、最近の若者は、クルマにさほどの関心を示していないようである。
自動車や石油の時代が幕を下ろそうとしているのだろうか。
いささかの感慨を覚えざるを得ない。
今年の漢字の「変」は、「大変化」の変なのだろうか。
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