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2008年12月 5日 (金)

邪馬台国に憑かれた人…⑥前澤輝政と「狗奴国」論

前澤輝政は、『近藤徳太郎―織物教育の先覚者』中央公論事業出版(0512)という著書の著者紹介欄に、以下のように解説されている。

1925年足利市生まれ。足利工業学校染織科卒、早稲田大学政治経済学部卒、同大学院文学研究科修了。文学博士。宇都宮短期大学、いわき明星大学教授を歴る。考古学、古代史。栃木県文化財保護審議会委員長などを歴任。著書に『新編足利の歴史』『日本古代国家成立の研究』(国書刊行会)、『概説東国の古墳』(三一書房)、『足利学校─その起源と変遷』(毎日新聞社)など。

渡辺一衛『邪馬台国に憑かれた人たち』学陽書房(9710)では、前澤の「三遠式銅鐸の盛行地域について-狗奴国考-」(1983)という論文が取り上げられている。
狗奴国は、「魏志倭人伝」で、卑弥呼の邪馬台国と争ったとされている国である。

倭の女王卑弥呼、狗奴國の男王卑弥弓呼と素より和せず。倭の載斯烏越等を遣わして郡に詣り、相攻撃する状を説く。塞曹エン史張政等を遣わし、因って詔書・黄幢をもたらし、難升米に拝仮せしめ、檄をつくりてこれを告喩す。卑弥呼以て死す。大いにチョウを作る。径百余歩、徇葬する者、奴婢百余人。更に男王を立てしも、國中服せず。
http://www.g-hopper.ne.jp/bunn/gisi/gisi.html

つまり、卑弥呼は、狗奴国との争いを要因として死んだと解釈される。
しかし、「以て」が、何を「以て」なのか、理解が分かれるところである。
狗奴国の位置については、次のように記されている。

南、邪馬壱國(邪馬台國)に至る。女王の都する所なり。水行十日、陸行一月。官に伊支馬有り。次を彌馬升と日い、次を彌馬獲支と日い、次を奴佳テと日う。七萬余戸ばかり有り。女王國より以北はその戸数・道里は得て略載すべきも、その余の某國は遠絶にして得て詳らかにすべからず。次に斯馬國有り。次に己百支國有り。次に伊邪國有り。次に郡支國有り。次に彌奴國有り。次に好古都國有り。次に不呼國有り。次に姐奴國有り。次に対蘇國あり。次に蘇奴國有り。次に呼邑國有り。次に華奴蘇奴國有り。次に鬼國有り。次に為吾國有り。次に鬼奴國有り。次に邪馬國有り。 次に躬臣國有り。次に巴利國有り。次に支惟國有り。次に烏奴國有り。次に奴國有り。此れ女王の境界の尽くる所なり。その南に狗奴國有り。男子を王となす。その官に狗古智卑狗有り。女王に属せず。郡より女王國に至ること萬二千余里。

この部分の「次に○○國有り」の読み方を解くくだりが、宮崎康平『まぼろしの邪馬台国 第2部 伊都から邪馬台への道 』講談社文庫(0808)のクライマックスともいえる(08年11月14日の項)。
宮崎は、盲目であるが故の聴覚の鋭敏さで、上記の国の名の音をもとに、その場所を比定していったのである。

前澤の上記論文のテーマである「三遠式銅鐸」がつくられたのは、3世紀で、邪馬台国と狗奴国とが対立した時代である。
前澤は、近畿式銅鐸は邪馬台国がつくり、三遠式銅鐸は狗奴国がつくった、と考えた。
三遠式銅鐸が近畿式銅鐸よりも早く消滅したのは、狗奴国が邪馬台国に滅ぼされたからだ、ということになる。

前澤は、天竜川東岸地域が「久努(クノ)」と呼ばれ、三遠式銅鐸の出土する西岸が「引佐(イナサ)」と呼ばれる地域であり、「久努」が狗奴国の名につながる土地だとする。
『古事記』には、「出雲国の伊那佐の小浜で」国譲りの交渉が行われ、大国主命の子・建御名方神が、科野国の州羽の海まで逃げて降伏したという話がある。
前澤は、この伝承のイナサは、浜松の「引佐」ではないか、とする。科野の州羽の海が諏訪湖であることは間違いなのとすれば、建御名方神が出雲から信州に逃げるのよりも、浜松から信州に逃げる方がずっと合理的である。
天竜川は、諏訪湖から流出しているからである。

狗奴国は、邪馬台国を脅かすほどの国力を持っていた。
邪馬台国畿内説の立場からすると、狗奴国に相応しいのは東海地方である。
理由はともあれ、「南」は「東」のこと、というのが、そもそも畿内説の立場である。
三種の神器の1つに、草薙剣がある。
名古屋市熱田区にある熱田神宮に祀られている。
草薙剣については、さまざまな問題があるが、渡辺は、草薙剣が三種の神器のひとつに選ばれたのは、この剣が狗奴国の宝剣であって、邪馬台国の八咫鏡と並ぶものであったからではないか、とする。
そして、この神宝が熱田神宮にあるということは、狗奴国が東海地方にあったことを裏付ける材料の1つではないか、と推論している。

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