渡辺喜美氏の造反に1票
自民党の渡辺喜美元行革担当大臣が、24日の衆院本会議で、民主党が提出した衆院解散を求める決議案に賛成した(写真は産経新聞12月25日)。早期解散は、渡辺氏の持論で、確信犯的造反であるが、党議拘束を無視して、与党としてはただ1人賛成票を投じたことになる。
決議案自身は、自公両党の反対多数で否決された。
自民党内には、「麻生不信任に賛成したということであり、重い処分とするべきだ」という意見もあったようであるが、執行部は、早々と戒告という軽い処分で済ませた。
自民党内に同情論があって、除名などの処分にすると、それらが顕在化しかねない、という思惑もあるのだろうが、何よりも、国民の間に解散を求める動きがあることが、重い処分に踏み切れなかった理由だと思われる。
しかし、党議拘束を破っているのだから、普通に考えれば、自ら離党するか、離党しない場合には除名処分にするのが相当というところだろう。
除名できなかったということは、自民党が崩壊しつつあることの現われではないだろうか。
「派遣切り」などの話題もあって、世の中は重苦しい閉塞感に覆われている。
トヨタ自動車が決算公表を始めてから初めて営業赤字に転落(12月23日の項)するなど、「100年に1度の危機的状況」という言葉は、あながち過大なレトリックではないのかも知れないが、閉塞感の根幹に、総理大臣が連続して任期途中で政権を放り出し、後任もまた総選挙による信任を経ていない、という政治状況があると思う。
現在の衆院の議席は、小泉政権下で、郵政民営化を眼目にして行われたときの結果である。
争点をシングルイシューに絞ったかのような雰囲気の中で、はじめて自民党の候補者に入れた、という知人も結構いた。
私は、刺客などの話題作りなどによる劇場型選挙を、当時から小泉マジックだと思っていた。
結果として獲得した議席数は、大政翼賛会的危うさを秘めていると感じられたし、実際に、安倍・福田・麻生と歴代の政権が、さまざまな問題含みの議案を可決してきた。
だから、早期に衆院解散をして、民意をもう一度問い直すべきだと思う。
渡辺氏の行動をスタンドプレーと見る向きもあるだろうが、政治家としての重い選択だったと考えたい。
自民党政権に愛想を尽かしている人も、それでは民主党でいいのか、ということになると、「どうも……」などという人が多い。
女性の間には、「小沢さんの顔付きが悪代官みたいで……」などという拒否感を示す人もいる。
感覚的な印象を重視することは必要だと思うが、政治的な選択が情緒的過ぎるのも如何かと思う。
そういう人たちは、結果的には現状維持を選択しているといってよい。
現時点で、民主党以外に、例えば社民党や共産党や国民新党などが政権の受け皿になることは考えられないから、現実的な選択肢としては、自公か民主かということになるからである。
もちろん、政治にパーフェクトはないのであって、相対的な選択しかないのだ。
私は、とにかく一度政権交代してみることが必要なのではないかと思う。
権力は腐敗する、といわれる。
それは、水が澱んで腐敗するのと同じことだろう。だから、たまには曝気した方がいい。
参院で与野党逆転しただけでも、自公が衆参両院とも与党だった時とは大きな違いがある。
もちろん、一寸先は闇ともいわれる世界である。
これから先、新党結成なども含め、どう展開していくか分からないし、現下の経済情勢は、政局的な動きをしている場合ではないことも確かだろう。
しかし、解散を先送りしている麻生政権こそ、政局的な動きともいえるのではなかろうか。
「100年に1度の危機」ならば、自民党的発想によって問題解決を図ることなどできるはずがないように思うのだが。
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