« 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…①古代尺について | トップページ | 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…③古墳の基本設計 »

2008年11月10日 (月)

岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…②古墳と尺度

岡本正太郎氏は、『高松塚古墳と大津皇子-古代尺度が解く千三百年の謎』梓書院(8706)において、建築、田制、里程、塔、仏像等の尺度について検討した後、「古代尺度と古墳」と題する章を設けている。
岡本氏は、古墳で問題にされるのは、築造年代や被葬者像であるが、それが確定的に判定された例はほとんどない、としている。高松塚もその1つということになる。

古墳判定には、葬制がキーファクターで、大化2(646)年に出された大化薄葬令で規格が定められており、これを手掛かりに調べれば、年代や被葬者の位階が明らかになると考えられるにも拘わらず、この規格で作られた古墳が発見されていない、という問題がある。
これについては、「大化薄葬令は施行されなかった」とか、「条文は書紀編者の創作」などの見解があるが、岡本氏は、“ものさし”が誤っているのだから、薄葬令に適合する古墳が見つからないのは当然だとする。

岡本氏は、終末期古墳の測定値を拾い上げ、岡本氏の推定と通説とを対比している。
例えば以下のようである。
高松塚石室高
実測値 113.4cm
推定 5.6尺/尺度 20.2cm(和尺)/復元値 113.12cm/誤差 0.28cm
通説 5尺/尺度 29.5cm/復元値 147.5cm/誤差 34.1cm

高松塚木棺長
実測値 202cm
推定 10尺/尺度20.2cm(和尺)/復元値 202cm/誤差 0
通説 6.8尺/尺度 29.5cm/復元値 200.6cm/誤差 1.4cm

マルコ山石室高
実測値 143.3cm
推定 5.6尺/尺度 25.25cm(持統尺)/復元値 141.4cm/誤差 1.9cm
通説 5尺/尺度 29.7cm/復元値 148.5cm/誤差 5.2cm

マルコ山石室長
実測値271.3cm
推定 10.8尺/尺度 25.25cm(持統尺)/復元値 272.7cm/誤差 1.4cm
通説 9尺/尺度29.7cm/復元値267.3cm/誤差 4cm

牽牛子塚東室石室高
実測値 130cm
推定 5.6尺/尺度 23.086cm(晋前尺)/復元値 129.28cm/誤差 0.72cm
通説 4尺/尺度 29.31cm/復元値 117.24cm/誤差12.76cm
牽牛子塚古墳東室石室長
実測値 211cm/推定 9.1尺/尺度 23.086cm/復元値 210.08cm/誤差 0.92cm
通説 9尺/尺度29.31cm/復元値263.79cm/誤差 52.79cm

上記は岡本氏の検証のごく一部であるが、結論として、岡本氏は次のように述べている(p58)。

このように、筆者が復元した設計規格(即ち尺度の長さと規格寸法)と、通説尺による推定規格寸法を比較いたしますと、前者は一○尺と九尺一寸という整然とした規格寸法を示すのに対して、通説尺では一貫した規格寸法を復元することは不可能です。

ここで、一寸という中途半端と思える規格について、岡本氏は、例えば、石室規格について、大化薄葬令で「王以上、上臣、下臣は内室長九尺、幅五尺」とされているものに、一寸を加えた「王以上」の規格寸法であるとしている。
これらの検証から、岡本氏は、幅が五尺一寸、高さが五尺六寸の古墳として、以下の3古墳を抽出している。
高松塚古墳
草壁皇子説、高市皇子説、忍壁皇子説、川嶋皇子説、などがあり、筆者(岡本氏)は皇太子大津皇子説
マルコ山古墳
草壁皇子説、高市皇子説、忍壁皇子説、川嶋皇子説、がある
牽牛子塚古墳
忍壁皇子と妃飛鳥皇女説、川嶋皇子と妃泊瀬部皇女説、などがある

|

« 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…①古代尺について | トップページ | 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…③古墳の基本設計 »

日本古代史」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/25169800

この記事へのトラックバック一覧です: 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…②古墳と尺度:

« 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…①古代尺について | トップページ | 岡本正太郎氏の高松塚被葬者論…③古墳の基本設計 »