« 被葬者推論の条件…⑦壁画(ⅰ)四神と日月 | トップページ | 被葬者推論の条件…⑨壁画(ⅲ)人物像 »

2008年9月17日 (水)

被葬者推論の条件…⑧壁画(ⅱ)星宿

天井に描かれている星宿は何を意味しているか?
B2_2末永雅雄氏は、『シンポジウム高松塚壁画古墳』創元社(7207)において、次のように発言している。

天井の数多い星もすべて金ぱくを使っています。私の知識では、このような表現方法はこんどが初めてです。それだけに、東京で網干君の第二報を聞いて、私は驚きはしなかったけれども、ただちに保存をしなければならないとおいう強い線に出たのは、一つにはあれだけ星宿をあらわしたものは、中国から日本までの壁画古墳には、ほかに例がないということからですよ。しかも天井に出ているでしょう。

また、同書において、有坂道隆氏は、次のように発言している。

私は高松塚のこの壁画、天井の星宿から四壁の四神などは、すべて統一した思想表現であると思います。
中略
それから、天井の星はかなり剥落もありますが、カラー写真を見ますと、次のようなことがほぼ確実に申せそうです。まず天井の四周には、二十八宿の星座を七宿ずつ、東西南北も順序もまちがえないで、つまり、下の四神とちゃんと対応して描いている。ただ、南方については、ちょうど朱雀が消滅しているのと同じように、天井の星もだいぶん剥落しております。それでもいくつか星が残っており、これをたどりますと南方の七宿があったとまちがいない。つまり、もともと完全に二十八宿を描いていたと思います。
次にまん中に妙な星があります。ちょっと見ると中心から片寄っているように見えますが、たんねんに星を拾ってみますと中央部になります。この中央部は、まん中に一つの星(北極星)があり、その星からまっすぐ赤い線が引かれてまた星が一つ見え、その次に星の剥落したようなあとがちょっと見えます。その先にもう二つ星があるはずなのですが、一つは剥落したようなあとが写真に見えますし、おそらくもう一つもあるだろうと思います。それから、まん中の星(北極星)の右のほうに、現在残っております星が二つと、剥落したあとのはっきり見える星が一つあります。それらを結んでいる赤い線をたどりますと、結局ここに四つの星があったことも確実です。。そうしますと、これは天の中心の北極五星と、北極を囲みます「四輔」を示しています。四輔というのは、輔佐のいわば大臣のことです。
中略
天井には、二十八宿のほかには、この北極五星と四輔四星だけが描かれたおり、北斗七星その他の星は見当たりません。
したがって、この古墳の壁画は、天帝が大宇宙を支配しているという意味を表現している統一した絵画であります。この壁画は一見、ただ単に中国古来の思想表現を最も端的にこの狭いところにまとめて表現したと考えられます。

(図は、上掲書から引用)

有坂隆道氏は、また「高松塚の壁画とその年代」(『高松塚論批判』創元社(7411)所収)において、次のように記している。

四神が二十八宿であれば、両者を描くことは重複を意味する。しかしここでは、もちろん、この壁画の画師に、二十八宿即ち四神という観念が欠けていたという問題ではなく、四神は二十八宿を原義としながらも四方を守る霊神として、中国の伝統的な意匠を、教えられるままに正しく、採用したのである。日月を金銀箔で示し、星もまた金箔を用いた豪華で貴重な例は、ほとんど他に類例をみないようであるが、それだけにその持つ意義を理解し、しかも教えられたとおり忠実に描いたものと解せられる。
高松塚壁画は、統一された構図を持っている。星宿といい、日月・四神といい、いずれも「治天下」の思想を示している。それはまさに被葬者の尊貴性を物語っている。
中略

高松塚を渡来人の古墳として、全く異質のものであると割り切れれば問題は簡単である。しかし、どうしてそのような論証ができるであろうか。高松塚の壁画は、星宿・日月・雲・人物画以外に、その他の装飾的絵画がないだけでも、むしろ中国・朝鮮の古墳壁画と異質的ではなかろうか。

梅原猛氏は、『黄泉の王―私見・高松塚』新潮社(7306)において、上記の有坂氏の見解に基づきつつ、以下のように述べている。

ここに、われわれは、大宝元年に地上で成立した天皇制と、同じ天皇制が地下において成立したと考えざるをえないが、このような、天皇の権力を日月に比する考え方が成立するためには、天文にたいする関心が必要とされるが、有坂氏は、それを天武天皇の時代に求めていられる。これは、王政ではない、いわゆる天皇制の成立の時期を天武天皇以後に、そして、その完成を、大宝以後に、つまり、藤原政権の成立の時期に求めているわれわれの前々からに考え方と、期せずして一致するものである。

|

« 被葬者推論の条件…⑦壁画(ⅰ)四神と日月 | トップページ | 被葬者推論の条件…⑨壁画(ⅲ)人物像 »

日本古代史」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/23728661

この記事へのトラックバック一覧です: 被葬者推論の条件…⑧壁画(ⅱ)星宿:

« 被葬者推論の条件…⑦壁画(ⅰ)四神と日月 | トップページ | 被葬者推論の条件…⑨壁画(ⅲ)人物像 »