« 大化改新…⑨白雉期の位置づけ | トップページ | 大化改新…⑪白雉改元儀の意義 »

2008年4月 6日 (日)

大化改新…⑩白雉献上記事

孝徳紀に詳しく記されている白雉献上記事について、九州王朝説の主唱者古田武彦氏は、次のように論じている(古田武彦、澁谷雅男『日本書紀を批判する』新泉社(9410))。
『日本書紀』は、七世紀後半に三個の年号(大化・白雉・朱鳥)が飛び飛びに(試行錯誤的に)行なわれたのち、八世紀以後、「大宝」以降連続年号の時代となった、と「主張」する。
つまり、「七世紀後半から八世紀へ」の推移が、同一王朝内の“なだらかな移行”として描写しているが、それは史的事実と相反している。

史的事実とは、七世紀末までは九州年号、八世紀以降は近畿年号が用いられ、そこに明らかな画期線が存在している、ということである。
古田氏は、「九州年号」が偽作されたものであるならば、6世紀前半移行についてだけ偽作したことが不自然であるし、『日本書紀』の3年号を「種(アイデアの元)」にして、その3年号を含む31年号を創作した、などという「想定」は不自然であり得ないことだ、とする。
しかし、『日本書紀』は、なぜ3年号を配置したのか?
その鍵となるのが、孝徳紀の白雉献上記事だとする。
『日本書紀』の記事は以下のような内容である。

先ず、「白雉」出現の先例を挙げる。
①後漢の明帝の永平十一年に、白雉があちこちにみられた
②周の成王の時に越裳氏が来て、白雉を奉った
③晋の武帝の咸寧元年に、松滋県で見られた
これらは、いずれも天子の盛業の証しとして出現した、とされている。
これに対し、高麗国の事例として、以下が挙げられている。
a 白鹿
b 白雀
c 三足の烏
よりささいではあるが「めでたいしるし」の例とである。

そしてわが国の事例として、次のように記されている(宇治谷孟『日本書紀〈下〉』(8808))。

わが国では応神天皇の世に、白い烏が宮殿に巣をつくり、仁徳天皇の時に竜馬が西に現れた。このように古くから今に至るまで、祥瑞が現れて有徳の君に応えることは、その例が多い。いわゆる白鳳・麒麟・白雉・白烏、こうして鳥獣から草木に至るまで、めでたいしるしとして現れるのは、皆天地の生むところのものである。

しかし、『日本書紀』の応神紀・仁徳紀には、この事例の記載はない。「白鳳・麒麟・白雉・白烏」と、吉祥の代表選手として並べられているにも拘わらず、である。
古田氏は、これを、中国の天子の固有名詞を日本国の「応神天皇」「仁徳天皇」ととりかえ、換骨奪胎した「盗用文」であるとする。
孝徳紀に記されている長門国司がたてまつった白雉は、「天子の吉祥」であり、「地方豪族の雄」や「夷蛮の王」に対する吉祥ではない。

そして、
a 『隋書』俀国伝の「日出ずる処の天子云々」の多利思北孤が、九州王朝の主であったのに対し、推古天皇は、「大王天皇」を称する地方豪族であったけれど、「天子」を称することはなかった。
b 『続日本紀』記事(宇治谷孟現代語訳『続日本紀〈上〉』講談社学術文庫(9206))。

①元明紀・和銅元(708)年
全国に大赦を行なう。和銅元年一月十一日の夜明け以前の死罪以下、罪の軽重に関わりなく、すでに発覚した罪も、まだ発覚しない罪も、獄につながれている囚人もすべて許す。八虐を犯したもの、故意による殺人、殺人、殺人を謀議して実行し終わったもの・強盗・窃盗と律により平常の赦には許されないとしている罪は、この中に入れない。山沢に逃げ、禁書をしまい隠して、百日経っても自首しないものは、本来のように罪する。
②元正紀・養老元年(717)年
(十一月十七日)
…山野に逃亡し、兵器を隠し持ち、百日以上になる者は、大赦はなく、もと通りの罪とする。

『続日本紀』の記事は、「禁書」を隠しもって山沢に逃亡(亡命)していたものが、追い詰められて「兵器」のみの残党狩りの様相を呈するに至ったことを示している。
「禁書」を手にした近畿天皇家は、その「禁書」を利用・換骨奪胎して(言い換えれば盗用して)、『日本書紀』という正史を「造作」したのだった。
その「盗まれた神話」の実例の1つが、白雉献上譚だというのが、古田氏の主張である。

|

« 大化改新…⑨白雉期の位置づけ | トップページ | 大化改新…⑪白雉改元儀の意義 »

日本古代史」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/12331105

この記事へのトラックバック一覧です: 大化改新…⑩白雉献上記事:

« 大化改新…⑨白雉期の位置づけ | トップページ | 大化改新…⑪白雉改元儀の意義 »