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2007年10月27日 (土)

新興俳句弾圧事件…②秋元不死男の「手記」

新興俳句弾圧事件の被検挙者は、強制的に「手記」を書かされたことが知られている。
しかし、その内容の詳細は明らかにされていなかった。
川名さんは、司法省刑事局編の極秘資料「思想資料ハンドブック」をマイクロフィルム化した中から、秋元不死男(本名秋元不二雄・当時の俳号は東京三)の手記「左翼俳句運動概観」を見つけだした。
なお、東京三の俳号は、共産党に由来するとされている。

「手記」の目次は以下の通りである。

第一、左翼俳句運動に関する認識
 一、左翼俳句運動に於ける二分野と其の主張並に立場
 二、私は何故「定型」を支持し、活動してきたか
 三、私の第一期活動の内容
 四、私の第二期活動の内容
 五、左翼俳句運動に於ける当面の任務
第二、新興俳句に対する認識
 一、俳句史概観
 二、新興俳句の近代派(近代俳句)について
 三、新興俳句の生活派(生活俳句)について
  (一)近代俳句と生活俳句の相違について
  (二)生活俳句の運動が勃りし理由について
  (三)生活俳句の本質と実践の方法並に其の時期
   (イ)根本態度
   (ロ)形式論
   (ハ)無季俳句
   (ニ)連作俳句
   (ホ)素材
  (四)生活俳句に於ける諸グループと其の交流関係について
  (五)生活俳句の例句二、三について

400字詰め原稿用紙換算で約125枚に相当する長さだというから、かなりの長文である。
目次を見ても、さすがにしっかりした構成になっていると感じられるが、そんな評価をしているケースではないだろう。

川名さんは、この中で、「第二/三/(一)近代俳句と生活俳句の相違について」の部分を抄出・再録している。
秋元さんによる新興俳句の区分は以下の通りである。
新興俳句
 A 近代俳句(水原秋桜子、山口誓子等によって昭和5年頃より始まる近代詩運動=モダニズム運動
 B 生活俳句(吉岡禅寺洞、嶋田青峰、日野草城等によって主唱された生活詩運動=リアリズム運動

秋元さんは、上記のように分類した上で、「生活俳句は、『コミンテルン』並に日本共産党の目的達成を支援することを目的に活動してきた左翼俳句運動であります」と書いているが、もちろん当局が起訴へ持っていくために強制的に書かせた内容である。
「公訴事実」には、「共産主義的芸術理論たる所謂『リアリズム俳句』理論の普及宣伝を為し」という文言があるが、そこに持っていくことに当局の狙いがあった。
それにしても、「リアリズムを主張したことが治安維持法違反とは!」と思うが、理由は何とでも付けられる、ということだろう。

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