安倍辞任をめぐって
安倍首相が辞任した。
12日の14時、昼から開会する予定だった国会を開会しないで、緊急記者会見を開いて表明した。超ド級の「日本列島大異変」(8月18日の項)だろうが、この時点では、安倍続投が異変的なことだと考えていたのだから、遅きに失したと思う。
「晴天の霹靂」とは、こういうことを言うのだろうか?
辞書によれば、「晴天時の突然の雷。急に起こる事件。不意の衝撃の意。」とある。不意の衝撃ではあるが、晴天時の雷に譬えるのが適切かどうかは疑問だろう。今の日本の状況は、決して「晴天」とはいえないのではないか。
目にするコメントのほとんどが、「無責任」としている。
まあ、私もそう思う。
何しろ、先の参院選では、「総理に相応しいのは、(民主党党首の)小沢さんか、(自民党党首の)私か?」と二者択一的に問いながら、選挙後には、「政権選択の選挙ではないから」と言って、歴史的大敗の総括をやり過ごす。
内閣改造をした途端に、いわくつきの農水相ポストでミスをする(9月4日の項)。外遊先で、「『テロ対策特措法』の延長に職を賭す」と自ら退路を断ち、10日に召集された国会の本会議で「ここで撤退し、国際社会における責任を放棄して本当にいいのだろうか」と所信表明したばかりである。
誰が見ても、タイミングが悪すぎるだろう。
辞めるなら、参院選の結果が出た段階だった。8月12日の項では、「自民党の歴史的大敗」に触れつつ、祖父である岸信介元総理の言葉を借りて、「続投表明後の安倍総理の姿勢は、まさに「声なき声」を頼りに、「歴史の判断を仰ぐ」と言いたげにも見える」と書いた。
しかし、7月29日の参院選から1ヶ月半、この期間は何だったのだろうと思う。テロとの戦いに存在を賭けると言っていた人が、「自爆テロ」を敢行してしまっては、シャレにもならない。
もちろん、辞任を決した胸中の本当のところは、本人しか分からない。
辞任表明の記者会見では、小沢民主党党首との党首会談を断られて、テロ特措法の延長の見通しが立たなくなったことを、自分が首相をしていることが原因だから、辞任によって局面の転換を目指す、というような説明をしている。
しかし、党首会談にそんなに重きを置いていたとしたら、そのこと自体が如何かと思う。論戦ならば、国会の場で、ガラス張りの中でやればいい。
非公開の党首会談は、内容が全面的に開示されることが前提だったにしろ、密約などがあれば当然秘匿される。まあ一種の談合とも言えるだろう。
また、与謝野官房長官は、「健康上の問題があった」というような発言している。だとすれば、それは昨日や今日といった話ではないだろう。遅くとも、国会召集前に辞任すべきだと考える。
あるいは、某週刊誌が相続税に疑惑があるという記事を掲載しようとしていたという情報もある。真偽のほどは、今のところ分からない。
しかし、いずれも「いま、このタイミングで」という説明にはなっていないように思う。
いずれ、真相が明らかになるのかも知れないが、現段階では不可解というしかない。
精神的にかなり追い詰められた状態だったことは間違いないと思われる。
自身の信念として、あるいはブッシュ大統領との関係等において、「テロ特措法延長」は至上命題と認識していたに違いない。一方で、客観情勢は、とてもそれが叶わないと感じられただろう。
この狭間で煩悶したのだと想像される。
ある意味で、「偽装国家」(9月2日の項)における改革の建前と実体の矛盾が露呈したものだろうし、自己の政治理念と参院選での大敗という「理念と現実」(9月3日の項)の乖離に引き裂かれた結果であろう。
しかし、そもそも「テロ特措法」は期限付きの法律であって、それは国会が決めたことである。
国際公約というならば、その「期限付き」が公約だったと考えるべきではないのだろうか。
だから、安倍さんの煩悶は、第三者的にみれば、見当違いだった。
延長を至上命題と考えるならば、期限が来る前に十分な時間的余裕をみておくべきだった。
参院選の歴史的大敗で見通しが立たなくなったと判断したならば、その時点で辞めるべきだった。
東亜・太平洋戦争においても、敗戦の決断の遅延が、途方もなく犠牲を拡大した(8月9日の項、8月10日の項、8月15日の項)。
決して「美しい」とは言えない安倍さんの引き際を見ると、何事も、始めるよりも終わりにする方が難しい、と改めて思う。
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コメント
やっぱり、話題は「安倍総理」ですよね。
さすが、ショージ君のブログを読んで、納得しておりました。
「何事も、始めるよりも終わりにする方が難しい、と改めて思う。」
・・・本当そうです・・・。
私も「結婚」より「離婚」の方が大変でした。*^^*
安倍総理に捧げましょう!!
「経つ鳥後を濁さず。」
って、感じで・・・。 ;^^
投稿: ryo | 2007年9月13日 (木) 11時26分
「後」じゃなくて、「跡」でした。
間違いだらけで・・・恐縮です。;^^
投稿: ryo | 2007年9月13日 (木) 11時28分
Repute-yの方、盛り上がっていますね。
まあ、読者の数が違うだろうからなぁ。
しかし、ビックリでした。
まさか、就任した時には、こんな結末を迎えることになるとは思わなかったでしょう。
まさに、夢幻の如くなり、という気がしますが。
まだまだ人生何が起きるか分からないですね。
想定外の「いいこと」が起きることを期待しつつ……
投稿: 管理人 | 2007年9月13日 (木) 12時26分