選句遊び
妻が、「選句遊び」というゲームを発明した。
先ずは、アンソロジーなどから適当数の俳句を抽出する。その中から、複数人が自分の気に入った句を選び出し、それを比べてみる、という趣向である。
俳句を作ろうということになるとちょっと腰が引けるけど、与えられた句の中から、自分の感覚で選句することは、やろうと思えば誰でもできる。
もちろん、古今の名句に対して選句などとはおこがましいことは承知しているが、そこは遊びである。
きっかけは、妻が暇そうにしていたので、手許にあった黛まどかさんの『知っておきたい「この一句」 』PHP文庫(0706)を奨めたことだった。
妻は読書家というタイプではないので、(手抜きをして)自分の気に入った句を選び出して、そこから読み始めたらしい。そのうちに、他の人はどれを選ぶか、ということに関心を持ったという。
そして、私に「ベスト5と次点3作を選べ」ということになった。ちょうど私が、黛さん選定の50句を一覧表にしていたので、気楽にそれに点を入れてみた。
その結果、ベスト5のうち、妻と私で共通するものは1句もなかったが、次点まで入れると4句が共通していた。
意外と面白かったので、同じフォーマットのものを兄姉たちに郵送して回答して貰おうということになった。ついでに、時節柄暑気払いを兼ねて集まろうか、ということに。
複数の人でやってみると、「ふ~ん、こんな句を選ぶのか」とか、「共通性が多いね」とか、「なんでこの句を選んだの?」とか言いながら、結構盛り上がる。
俳句が「座の文芸」と言われるのを疑似体験した気分である。
各人の選択結果を、1位に選出した句に6点を付け、以下順に次点作に1点というように重み付けをして集計してみた。
ダントツの1位だったのが、松本たかしさんの次の句である。
ひく波の跡美しや櫻貝(松本たかし)
10人中で、1位とした人が2人、次点までに選んだ人が7人いた。私も5位の句として1票を投じたが、美しいイメージの句だというのが共通の評価のようだ。
高浜虚子は、「選句は創作である」と言っているから、選句のレベルというものもあるのだろうとは思うが、遊びだからそんなに真面目に考えてはいない。
しかし、今まで自分が俳句に対してどういう嗜好を持っているのか、余り考えたことがなかったので、面白い体験だった。
私の選句基準は、どうやら視覚的なイメージの鮮やかさと音の響きやリズム感にあるように思う。
視覚性は、よく言われる写生ということに繋がるだろうし、音韻性は、俳句が詩であることの反映だから、まあ当たり前のことではあるのだろうが。
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コメント
ブログ拝見いたしました。
昔と変わらぬ、さすがの文才!
これからも拝読させていただきます。
「雲の墓標」・・・今日、I君が買ってきてくれました。
でも、先に「風の盆・・・・」を読んだら?・・と言われ、
「なんで?」・・・と聞いたら、
「風の盆・・・」の作者、高橋治さんは、
I君の銀行時代の仲間の同級生だそうで・・・。
そのお話は、実話?とか・・・???
I君はショージ君に「ご縁」を感じると言っておりました。
I君も「夢幻と湧源」お気に入りに登録してましたよ〜!
^ー^
投稿: ryo | 2007年8月23日 (木) 23時21分
そうですか、銀行時代の仲間の同級生・・・。そういう年代になるのですねぇ。
沼津出身の大岡信という詩人がいます。『折々の歌』など、多数の著書で有名ですが、高橋さんが同級生(東大国文)と書いていたような記憶があります。高橋さんは、多分金沢(旧制四高)出身ですが。
「ご縁」恐縮です。まあ、試運転中でどこまで続くか、という感じではありますが。
投稿: 管理人 | 2007年8月24日 (金) 04時10分