2016年8月25日 (木)

皇位の男系継承論とアマテラス/天皇の歴史

天皇陛下の生前退位のお気持ちに対して、内閣法制局などが生前退位には改憲が必要と言っているという。
理由としては「憲法第1条で天皇の地位は日本国民の総意に基づくと定めていて、天皇の意思で退位することはこれに抵触する」ということのようだ。
日本国憲法を見てみよう。

第一章 天皇 
第一条   天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条   皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

内閣法制局の読解は疑問である。
「日本国民の総意に基く」に掛かるのは、「この地位は」であり、それは「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という地位のこととしか読みようがない。
皇位継承については「皇室典範の定めるところにより」とあり、憲法とは関係がない。
皇室典範では第4条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とあるのみで、天皇の「生前退位」を明文的には禁じているわけでもない。
敢えて言えば、「想定外」ということだろう。

しかし内閣法制局「など」は以上のような指摘を行った上に「生前退位を今の天皇陛下にだけに限定するのであれば、特例法の制定で対応が可能」とも説明。しかし、どうして「生前退位を将来にわたって可能にするため」には改憲が必要で、今上天皇に限れば特別法の制定のみで対応できるのかの説明もされていません。
皇室典範は憲法と違って扱いは普通の法律と同等であるため、衆参両院で過半数を取っている与党がその気になれば次の国会でも十分に生前退位の条項を追加することは可能です。その最も簡単であり、今上天皇の大御心にも沿った選択をせず、敢えて無理筋な改憲を口にしたり特別法という道を選ぼうとするのはなぜなのでしょうか?そして従来の政府見解とも異なるこうした指摘を行ったのはいったいどこの誰なのでしょうか?
またも「お気持ち」の政治利用、内閣法制局「など」が天皇陛下の生前退位に改憲が必要とミスリード

皇位継承問題は、小泉内閣時に検討された。
皇室典範の第一章は、「皇位継承」であり、次のように規定している。

第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。

つまり、男系&男子が条件である。
女性天皇については、古代史で馴染み深い推古天皇や持統天皇が存在する。
推古天皇の場合は、父親が欽明天皇であり、持統天皇の場合は、父親が天智天皇であるから、男系の女性天皇である。

男系男子に限定すべき論拠は、神武天皇のY染色体を保持することが重要だという。
ヒトのY染色体というのは、男性のみが持つ染色体だから、Y染色体は、男性の系譜を通じて伝えられることになる。
だから、神武天皇のY染色体を維持するためには、現在の皇室典範が規定するように、男系の男子でなければならない、という主張である。
⇒2008年4月25日 (金):天皇家のルーツ

いかにも遺伝学を踏まえた議論であるかのようであるが、もちろん神武天皇の実在さえも疑わしい神話の中の話であって、Y染色体など議論すること自体がおかしい。
記紀神話における系譜は以下のようである。
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天照大神-Wikipedia

記紀神話のハイライトは天孫降臨であろうが、天孫とは「天(あま)つ神の子孫。特に、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」のことである。
特に、以下は、「天」をアマテラス、「孫」をニニギノミコトに限定していると言えよう。
⇒2012年12月25日 (火):天孫降臨と藤原不比等のプロジェクト/やまとの謎(73)
記紀神話がことさらに男系を意識しているようにも思えないのだが。

小泉内閣時の「皇室典範に関する有識者会議」は、2005年11月24日に以下のような内容の報告書を提出した。
・女性天皇及び女系天皇を認める
・皇位継承順位は、男女を問わず第1子を優先する
・女性天皇及び女性の皇族の配偶者も皇族とする(女性宮家の設立を認める)
・永世皇族制を維持する
・女性天皇の配偶者の敬称は、「陛下」とする
・内親王の自由意志による皇籍離脱は認めない
女性天皇及び女系天皇を認めるということで、現行の皇室典範を大きく変更しようとするものであったが、秋篠宮妃の懐妊が報告されると、男児誕生の場合には、第3位の皇位継承資格を有することになる。
⇒2007年12月23日 (日):血脈…③万世一系
無事悠仁親王が誕生されたわけであるが、問題の本質は解決されていないままである。

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2016年8月24日 (水)

クールジャパンと『「いき」の構造』/日本の針路(292)

クールジャパン(Cool Japan)という言葉がある。
Wikipediaでは、次のように説明されている。

日本の文化面でのソフト領域が国際的に評価されている現象や、それらのコンテンツそのもの、または日本政府による対外文化宣伝・輸出政策で使用される用語である。
1990年代に、イギリスのトニー・ブレア政権が推し進めたクール・ブリタニアを名称ごと模倣したもので、ジャパンクール(Japan Cool)と呼称される場合もある。
具体例としては、日本における近代文化、 映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマ・ゲームなどの大衆文化を指す場合が多い。また、自動車・オートバイ・電気機器などの日本製品や産業、現代の食文化・ファッション・現代アート・建築などを指す。また、日本の武士道に由来する武道、伝統的な日本料理・茶道・華道・日本舞踊など、日本に関するあらゆる事物が対象となりうる。

リオ五輪の閉会式で、安倍首相がスーパーマリオに扮した。
任天堂がファミリーコンピュータ用ゲームソフトの「スーパーマリオブラザーズ」を発売したのは、1985年(昭和60年)だったから、もう30年を超える。
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配管工(大工)の兄弟マリオとルイージが、ピーチ姫を救出するゲームである。
Wikipedia-スーパーマリオブラザーズによれば、日本国内で681万本以上、全世界では4,024万本以上を売り上げ、「世界一売れたゲーム」としてギネス世界記録に登録されている。
『ファミ通』1000号記念に行われた「読者が選ぶ未来に伝えたいゲーム」なるアンケートでは大差で1位を獲得した。
まさに国民的キャラクターであり、クールジャパンの代表と言えよう。

しかしオリンピックで首相自身がマリオに扮するのは如何なものだろうか。
オリンピック憲章は以下のように謳っている。

オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない。

建前としては、首相の出番ではないだろう。
以下のような意見もある。

この愚行は、ナチスのヒトラーが戦前のベルリンオリンピックを最大限利用したことに匹敵する気もしました。
マリオに扮装するならば、鼻下ののチョビ髭だって必要だったはずです。
それをやったら・・・ぞっとします。まさに、「帰ってきたヒトラー」ではありませんか。パロディー映画!?
きっとそうしたら、国際的に大問題になったでしょう。
アベマリオ、オゾマシイ

私はクールジャパンとしては、九鬼周造が『「いき」の構造』岩波文庫(1979年9月)で論じた「いき」の要素も必要だと思う。
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⇒2013年1月27日 (日):『「いき」の構造』に学ぶ概念規定の方法/知的生産の方法(33)

と言っても、電通や官邸には通じないだろうなあ。

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2016年8月23日 (火)

弱者を切り捨てる福祉政策/日本の針路(291)

厚生労働省が介護保険サービスの見直しに向けた議論を始めた。
3年に1度見直しが行われるが、介護の必要度が低い利用者向けのサービスを削る方向で検討されているという。
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東京新聞8月19日

高齢化による介護保険給付額は増大している。
政府はサービスを縮小して対応しようとしているが、必要なことは介護度を上げないことであり、軽度者のサービスを縮小することは、重度化を進める可能性が高い。
安倍政権は「一億総活躍」を掲げているが、現実に行われていることは、弱者いじめとも言うべき施策である。

政府が2015年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、福祉用具のレンタルを含む軽度者向けサービスの見直しが明記されている。
財務省は、訪問介護の生活援助やバリアフリー化の住宅改修費を介護保険の給付から外し、一部還付も念頭に置いた原則自己負担を主張し、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会は年内の結論を目指し議論を進めているという。
弱者切り捨てでは福祉政策の名に値しない。
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東京新聞8月19日

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2016年8月22日 (月)

反戦のレジェンド・むのたけじ/追悼(94)

反戦平和を訴え続けた反骨のジャーナリストむのたけじ(本名武野武治)さんが、21日老衰のため死去した。
101歳だった。
アジア・太平洋戦争で大本営発表をそのまま報道した責任に向き合って、敗戦を機に朝日新聞社を辞めた。
1948年2月、故郷の秋田でタブロイド判2ページの週刊新聞「たいまつ」を創刊した。
同紙は米国占領下の検閲に屈せず、教育や農業問題を中心に社会の矛盾を掘り下げた。
戦後の時代を見事に生きた「反戦のレジェンド」と言えよう。
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東京新聞8月22日

1936年に東京外国語学校(現・東京外大)卒業後、報知新聞、朝日新聞の社会部記者として活躍した。
1942年にインドネシア上陸作戦に従軍し、終戦日の45年8月15日に退社した。

一度は捨てたペンを握り「たいまつ」を創刊したのは、その前年の連合国軍総司令部(GHQ)が出した2・1ゼネスト中止命令への怒りだった。
「どんな悪い平和でもいい戦争に勝る。平和は意識的な戦いの中でしかつかめない」と説いた。
原点は、戦争中に3歳のまな娘を病気で亡くした経験だった。

私の高校時代からの友人で、某新聞社でジャーナリストとして活躍し、働き盛りに亡くなった友人が、高校時代に尊敬する人として、むのさんの名前を挙げていたのを思い出す。
その頃読んだ『たいまつ十六年 』が岩波現代文庫で復刊されている。
100歳を超えていたのだから、天寿を全うしたと言えよう。
合掌。

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2016年8月21日 (日)

唯一の被爆国の立場で核兵器に対しどう判断するか?/日本の針路(290)

安倍晋三首相は20日、羽田空港でオバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用政策への懸念を、自らがハリス米太平洋軍司令官に伝えたとする米紙報道について、「ハリス司令官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と述べ、否定した。
安倍首相は7月26日に官邸でハリス司令官と会談しており、ワシントン・ポスト紙が15日、安倍首相が「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」という趣旨の懸念をハリス米太平洋軍司令官に伝えたと報じている。
ワシントン・ポスト紙の誤報なのだろうか?

オバマ大統領がチェコの首都プラハで数万人の市民を前に演説し、「核なき世界」を訴えた。

「米国は、核兵器を使ったことがある唯一の核兵器国として、行動する道義的責任がある。私は、核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を表明する」核廃絶への国際的な制度強化を米国が主導する考えを表明したが、「核兵器が存在する限り、敵を抑止するための、効果的な核戦力を維持する」とも述べた。核実験の世界規模での禁止に向けては、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指すと表明。北朝鮮やイランのような核不拡散体制でのルール違反の国への対応として、罰則強化に取り組む考えも示した。
「人類の運命は我々自身が作る。我々の分断に橋をかけ、世界を、我々が見いだした時よりも平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ」
核なき世界 模索の8年

しかし、シリア情勢をめぐる緊張やウクライナ危機で米ロ関係は悪化し、北朝鮮も核実験を続けており、核兵器のプレゼンスは減るどころか高まっている。
ジュネーブの国連欧州本部で行われていた核軍縮に関する国連作業部会は最終日の19日、核兵器の法的禁止についての2017年の交渉入りを、「幅広い支持」を得て国連総会に勧告するとの報告書を賛成多数で採択した。
今秋の国連総会で議論が本格化する見通しで、核兵器禁止条約制定に向け大きく歩を進めることになりそうだが、日本は棄権した。
多数決の状況は、賛成68、反対22、棄権13であり、核禁止を巡る国際社会の亀裂が鮮明になった。
2160821
東京新聞8月21日

唯一の被爆国として核廃絶を訴える一方、米国の「核の傘」に依存する矛盾が現れた。
しかし、交渉入りには投票に参加しない国を含め加盟国過半数の107カ国が支持したという。
これだけの非核保有国が法規制を求めている事実を重く受け止めるべきだろう。

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2016年8月20日 (土)

SaaSとIaaSとPaaS/「同じ」と「違う」(97)

急速に市場が拡大したクラウドコンピューティング・サービスは、「提供対象」によって次のように分けられる。
(1)不特定多数を対象として提供されるパブリッククラウド(public cloud)
(2)同一企業内または共通の目的を有する企業群を対象として提供されるプライベートクラウド(private cloud)
(3)パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて利用するハイブリッドクラウド(hybrid cloud)

クラウド・サービスの代表例がSaaSと呼ばれるものである。
「SaaS」(Software as a Service:「サース」あるいは「サーズ」と発音)は、ソフトウェアをユーザー側に導入するのではなく、ベンダ(プロバイダ)側で稼働し、ソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形態を指す。
このようなサービスを従来はASP(Application Service Provider)と呼んでいた。
SaaSとASPの間に本質的な違いはない。
⇒2012年9月 2日 (日):ASPとSaaS/「同じ」と「違う」(51)

似たような概念にPaaS、IaaSがある。
PaaSは「Platform as a Service」の頭文字を取った略語で「パース」と読む。
アプリケーションソフトが稼動するためのハードウェアやOSなどのプラットフォーム一式を、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。

IaaSは「Infrastructure as a Service」の頭文字を取った略語で「イァース」と読む。
情報システムの稼動に必要な仮想サーバをはじめとした機材やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供する形態のことを指す。
これまでホスティングサービスと言われてきたサービスとほぼ同じである。

IaaS、PaaS、SaaSは、ソフトウェアサービスを提供するのに必要な構成要素の提供段階によって区別することができる。
構成要素は大きく分けて、ネットワーク、ハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーション、の5つである。
基本的にはこの5つはこの逆順に依存関係にある。
アプリケーションはミドルウェアが無いと動作せず、ミドルウェアはOSが無いと動作しない。
Iaassaaspaas
知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い

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2016年8月19日 (金)

甘利不起訴問題と法務省人事/日本の針路(289)

あっせん利得処罰法違反容疑などで告発され、東京地検が不起訴とした甘利明・元経済再生担当相と元秘書2人について、東京第4検察審査会は、甘利氏について「不起訴相当」とし、元秘書2人については「不起訴不当」と議決した。
甘利氏は8月1日、約半年ぶりに国会に姿をあらわし、本会議場で安倍首相とにこやかにあいさつを交わしたうえで、「私の件は決着した」などと述べた。

 甘利氏は、1月末の辞任直後から「睡眠障害」の療養を理由に、半年余り国会を欠席していた。その間、東京地検は甘利氏と元秘書2人について、あっせん利得処罰法違反の罪などでの不起訴処分を決定。検察審査会は元秘書2人への再捜査を求める「不起訴不当」を議決したが、甘利氏については「不起訴相当」とし不起訴が確定した。
 甘利氏は1日、「本当に寝耳に水の事件で、青天のへきれき」と振り返った。その上で「ずっと申し上げてきた事実関係が理解されたものだと思うが、築いてきた信用は落としてしまった。今まで以上に国民のためにできることをやりたい」と話した。弁護士に依頼した元秘書2人らに関する調査は検察の再捜査後に報告書をまとめる予定だという。
甘利氏「私の件は決着した」 閣僚辞任後初めて国会登院

まったく不可解な決着であるが、この裏で、法務省の黒川弘官房長が事務次官に昇格するという人事があった。

Photo 黒川新事務次官は、甘利明前経済再生担当相の口利きワイロ事件の際、野党から事件をを握りつぶした“黒幕”として名前があがった人物だ。民進党のプロジェクトチームが法務官僚を呼んでヒアリングをした際、「黒川さん、その辺りのラインですべてを決めているんじゃないか」と名指しされたことがある。果たして、この人事は法を歪めて政権に協力した論功行賞なのか。
 この人事発表の翌16日には、東京地検特捜部が甘利氏の元秘書2人を再び不起訴処分(嫌疑不十分)とすることを発表。あまりに絶妙過ぎるタイミングである。特捜部は「総合的に判断して(あっせん利得処罰法の)構成要件に当たらない」と説明しているが、元秘書2人は約1300万円ものワイロを受け取り、甘利氏本人も大臣室で50万円の現金をもらっている。これが犯罪でなくて何だというのだ。
甘利ワイロ事件 握りつぶした“黒幕”が事務次官昇格の仰天

特捜部は同法の構成要件である「国会議員の権限に基づく影響力の行使」について、「『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などの極めて強い圧力を指し、一般的な口利きにはあたらない」と解釈し、嫌疑不十分で不起訴としたが、政治家に甘い処分であることは明らかである。
ワイロを渡した人が「渡した」と録音テープまで残しており、もらった側も「もらった」と認めているのである。
これで不起訴になるなら、何でもアリだろう。

検察審査会の議決は、贈った側のの総務担当者から元秘書への計約1300万円にのぼる現金提供については、「請託を受けてあっせんしたことの報酬、謝礼として行われたとみるのが自然だ」と結論付け、再捜査の必要があると判断した。
一方で、甘利氏については、「元秘書と共謀していたことをうかがわせる証拠はない」とし、不起訴相当だという。
小沢一郎氏の政治資金規正法違反事案と比べ、アマリにも対照的である。
⇒2012年2月18日 (土):小沢裁判に対する疑問

菅官房長官と“蜜月関係”にある黒川氏は、裏で検察、法務省を牛耳っているという。
検察の正義は何処にありや?

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2016年8月18日 (木)

全総と共に生きた計画の人・下河辺淳/追悼(93)

元国土事務次官の下河辺淳氏が、13日亡くなった。
92歳だった。
1947年に東京大学第一工学部建築学科を卒業した。
在学中に終戦を迎えたため高山英華氏の下で戦災復興都市計画に参画し、卒業後戦災復興院に勤務した。

1961年、「工業地の立地条件 - 計画単位及び必要施設に関する研究」で、日本都市計画学会石川賞論文調査部門受賞。
1962年からは経済企画庁総合開発局。「国土の均衡ある発展」を謳い、戦後日本における国土開発の根幹をなした全国総合開発計画(通称「全総」、1962年閣議決定)の策定に携わる。以後、2000年の21世紀の国土のグランドデザイン(五全総)に至るまで、長らく国土開発・国土行政に力を及ぼし続けた。1977年、国土事務次官に就任。1979年退官し、総合研究開発機構(通称NIRA)の理事長に就任。
退官後も「多極分散型国土」を掲げる第四次全国総合開発計画(四全総)の策定にも尽力。1992年から株式会社東京海上研究所理事長。「ボランタリー経済」に取り組む。社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)裁定委員会委員などを経て1995年からは阪神・淡路大震災復興委員会委員長として復興政策の立案に参画。 2003年に下河辺研究室を設立。
下河辺淳-Wikipedia

全総の系譜は以下のようである。
Photo_2
成長戦略とガバメント・リーチ

私は、三全総の頃、リサーチャーをやっていた。
NIRAがスタートした頃、リサーチャーから転向したが、リサーチの世界の頂点にいた人と言えよう。

Photo_3米軍用地強制使用手続きを巡る代理署名訴訟で、大田県政と橋本政権との関係が緊張した際、梶山静六官房長官の要請で沖縄と政権との間を仲介した。「沖縄問題を解決するために」とする「下河辺メモ」は大田知事と橋本首相を和解に導いた。
下河辺淳氏が死去 普天間返還にも深い関わり 大田県政と政府を仲介

市場主義が優位になり、国土計画の存在感が薄くなっている。
安倍政権に至っては、「PDCAサイクル]さえない。
⇒2016年5月14日 (土):PDCAなき安倍政権の政策/アベノポリシーの危うさ(64)
⇒2016年7月25日 (月):アベノミクスの帰結としてのヘリコプターマネー/アベノポリシーの危うさ(93)

しかし政策に計画は不可避である。
今、この人が現役ならば、どう考え、行動していたであろうか。
合掌。

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2016年8月17日 (水)

野武士から評論家へ・豊田泰光/追悼(92)

元西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)遊撃手で、引退後は辛口の野球評論家として活躍した豊田泰光さんが14日、肺炎のために亡くなった。
茨城県出身で81歳だった。

Ws000001_2 1952年に水戸商高の主力として夏の甲子園に出場。選手宣誓を務め、翌年西鉄に入団。守備よりも打撃が評価され、1年目から遊撃手のレギュラーとなり、115試合で27本塁打、打率2割8分1厘で新人王を獲得。56年には巨人との日本シリーズでMVPを獲得、以後57年は優秀選手、58年は首位打者と西鉄黄金時代となった3年連続日本一に貢献した。
 62年に中西太選手兼任監督の補佐として選手兼任で助監督を務めたが、翌年は国鉄(現ヤクルト)に移籍。69年に17年の現役生活にピリオドを打った。通算成績は1814試合に出場し、1699安打、263本塁打、打率2割7分7厘。
 引退後は72年に近鉄でコーチとなった以外は、スポニチ本紙特別編集委員を務めるなど評論家として活動。ニッポン放送、文化放送、フジテレビで評論、解説を行い、93年から2013年まで「週刊ベースボール」誌上でコラム「豊田泰光のオレが許さん!」を1001回にわたって執筆した。辛口で愛情のある評論はファンにも親しまれた。
元西鉄の強打者 豊田泰光さん死去 81歳 辛口評論でも人気

西鉄の黄金時代のことは、数々の語り草を遺している。
「神様、仏様、稲尾様」と言われた稲尾和久投手をはじめ、打線は別名流線型打線である。

西鉄黄金時代の監督・三原脩は、三宅大輔などの理論をふまえ、1番に一発もあるバッティングの巧い打者を据え、2番に入っている強打者で一気に得点を挙げ、3番に最強打者を、4・5番に長距離打者を、という、それまでの野球界の常識を覆す打線論を提唱した。それがこの流線型打線である。それなりの選手が揃っていなければ組めないものであるが、当時の西鉄にはそれを可能にするだけの面々が揃っていた。流体力学から着想を得たという説もあるが、真偽のほどは不明である。
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Wikipedia-流線型打線

2番の豊田泰光は、2番打者でありながらクリーンナップ並の成績を挙げている。
恐怖の2番打者の先駆けである。

1969年のシリーズ終了後に引退し、1973年以降、評論活動を続けている。
『週刊ベースボール』にはコラム「豊田泰光のオレが許さん!」を1993年から2013年に終了するまでに通算1001回にわたって連載し、日本経済新聞ではスポーツ欄にコラム「チェンジアップ」を1998年から2013年まで続けていた。
文武両道の人だった。
合掌。

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2016年8月16日 (火)

大文字の送り火/京都彼方此方(11)

京都の名物行事・伝統行事「五山の送り火」の日である。
京都は生憎余り良い天気ではなく、市内からは見えないところが多かったようだ。

毎年8月16日に
 ・「大文字」(京都市左京区浄土寺・大文字山(如意ヶ嶽)。20時00分点火)
 ・「松ヶ崎妙法」(京都市左京区松ヶ崎・西山及び東山。20時05分点火)
 ・「舟形万灯籠」(京都市北区西賀茂・船山。20時10分点火)
 ・「左大文字」(京都市北区大北山・左大文字山。20時15分点火)
 ・「鳥居形松明」(京都市右京区嵯峨鳥居本・曼陀羅山。20時20分点火)
以上の五山で炎が上がり、お精霊(しょらい)さんと呼ばれる死者の霊をあの世へ送り届けるとされる。
Photo
Wikipedia-五山送り火

京都では「送り火」とか「大文字さん」と呼んでいる。
よく「大文字焼き」という人がいるが、ネイティブ京都人はそういう言い方はしない。
山焼きではなく、宗教的行事である。

起源は諸説あるがはっきりしない。
1.  平安初期「空海」説
かつて大文字山のふもとにあった浄土時が火事になったときに、本尊の阿弥陀仏が山上に飛来して光明を放ったと伝えられています。
この光を弘法大師(空海)が大の字型に改めて火を用いる儀式にしたという説
2、 室町中期「足利義政」説
1499年、足利義政が近江の合戦で死亡した息子・義尚の冥福を祈るために、家臣に命じて始めたとの説。
3. 江戸初期「能書家・近衛信尹」説
1662年に刊行された書物「案内者」の中に「大文字は三藐院殿(近衛信尹)の筆画にて」の記述がある。

五山の送り火も、先祖の霊を天国に送るお盆の行事である。
自らが健康で元気な毎日を送れていることに感謝し、鎮魂の気持ちでお祈りを捧げるものと言われる。
基本的には、点火された時に大声を出したり、騒いだりするようなものではない。眺める場所は鴨川などが一般的であろう。
昔、京都大学理学部の校舎の屋上に上がって見たことがある。
左大文字の如意ケ嶽(大文字山)は目の前であり、絶好のポジションだったが、今では管理が厳しくなっているというから難しいだろうなあ。
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2016年8月15日 (月)

敗戦記念日の雑感/永続敗戦の構造(4)

天皇陛下は、全国戦没者追悼式に出席され、以下のように述べられた。

過去を顧み,深い反省とともに,今後,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
主な式典におけるおことば(平成28年)

今年のお言葉は昨年の踏み込んだお言葉から、「深い反省」のみを残し、全体は一昨年以前の「定型」に戻られた。
昨年は、安倍首相の談話等もあったので、かなり意識されたのであろう。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
⇒2015年8月16日 (日):追い込まれつつある安倍首相/日本の針路(214)

ゴジラ映画の最新作『シン・ゴジラ』が公開中である。
未見であるが、「シン」は「新・真・神」等の意味で、「現実対虚構」というキャッチコピーに「ニッポン対ゴジラ」というルビが振ってある。
現実の日本に対し、ゴジラは何のメタファー(隠喩)なのだろうか?

東日本大震災からの復興構想会議の議長代理を務めた御厨貴氏は、震災直後に『「戦後」が終わり、「災後」が始まる』という評論を書いた。
震災から5年半経とうとしているが、果たして「戦後」は終わったのか、また「災後」になっているのだろうか?

天皇陛下の生前退位のご意向に対し、日本会議等安倍首相に近い思考の人々が、反発しているという。
日本会議自身のサイトでは、8月2日付で以下のような見解が載っている。

◎いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の基本見解について
七月十三日夜のNHKニュースが「天皇陛下『生前退位』の意向示される」と報じたことを発端として、現在、諸情報がマスコミ各社によって報道されている。しかし、その多くは憶測の域を出ず、現時点で明確なのは、政府および宮内庁の責任者が完全否定している事実のみである。
この段階で、天皇陛下の「生前退位」問題に関連して本会が組織としての見解を表明することは、こと皇室の根幹にかかわる事柄だけに適当ではないと考える。確証ある情報を得た時点で、改めて本会としての見解を表明することを検討する。平成28年8月2日
いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の立場について

ビデオメッセージ公開から1週間経つが、サイトの更新はない。
安倍首相のお気に入り稲田朋美防衛大臣は、「国に命をかける者だけに選挙権を」という反動丸出しの主張をしている。
もちろん、「国民が国に命をかける」のではなく「国が国民の命を守る」のが第一義であるのは言うまでもない。
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福島第一原発事故の教訓を何ら生かすことなく、川内原発に続き、伊方原発を稼働させた。
⇒2016年8月13日 (土):伊方原発3号機再稼働批判/技術論と文明論(62)
福島第一原発事故で、メルトダウンした核燃料(デブリ)をどう処理するのか、未だ方針が立てられていない。
いったん記述された「石棺方式を含め、状況に応じて柔軟に対応する」という計画案が削除された。
状況把握もできていないのが現状で、原発事故はまさに進行中の事態である。
決して「災後」と言える状況ではない。

同様に「戦後」は終わっていない。
日本会議や安倍首相のシンパなどは、戦前の「国体」への回帰が悲願なのだ。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)
⇒2016年8月14日 (日):日本をダメにする日本会議という存在(2)/日本の針路(288)

白井聡氏が『永続敗戦論ー戦後日本の核心』太田出版(2013年3月)で指摘した構造は、より明確になりつつある。
⇒2016年6月 8日 (水):誤りを謝らなくてもいい口実/永続敗戦の構造(3)
⇒2016年6月 6日 (月):伊勢志摩サミットとは何だったのか/永続敗戦の構造(2)

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2016年8月14日 (日)

日本をダメにする日本会議という存在(2)/日本の針路(288)

八月八日に天皇陛下が「象徴天皇としての務め」についてのお気持ちを、ビデオメッセージとして公表された。
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天皇陛下が生前退位の意向 1年以上前から

受け止め方は人によって異なるだろうが、私は、全身全霊で象徴天皇の務めを果たしてこられたこと、高齢化でそれが困難になりつつあることを率直に語られて、深い感銘を受けた。
⇒2016年8月 9日 (火):天皇陛下のお気持ちと護憲/日本の針路(285)

ところが、お気持ちを改憲に利用しようとするフジ産経グループには仰天させられた。

「天皇陛下の生前退位『制度改正急ぐべき』70・7% 『必要なら憲法改正してもよい』84・7%」(産経ニュース8日付)
「『生前退位』可能となるよう改憲『よいと思う』8割超 FNN世論調査」(FNNウェブサイト8日付)
 天皇がビデオメッセージで「お気持ち」を表明したその日、こんな驚愕の見出しをぶったのは、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)だ。
フジ産経が「天皇の生前退位のために改憲が必要」のデマにもとづく詐欺的世論調査を実施! 安倍政権もグルか

生前退位は皇室典範の問題であって、憲法改正の必要などまったくない。
安倍政権周辺は、生前退位に反対らしい。

 実は7月にNHKが「生前退位ご希望」の第一報を打った際、菅義偉官房長官は報道に激怒し、そのあとも政府関係者からは「生前退位は難しい」という慎重論ばかりが聞こえてきていた。「国務を減らせば済む話」「摂政で十分対応できる」、さらに「天皇が勝手に生前退位の希望を口にするのは、憲法違反だ」という声も上がっていた。
 また、安倍政権を支える「日本会議」などの保守勢力からはもっと激しい反発が起こっていた。たとえば、日本会議副会長の小堀桂一郎氏は産経新聞で「生前退位は国体の破壊に繋がる」との激烈な批判の言葉を発している。
「何よりも、天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である。全てを考慮した結果、この事態は摂政の冊立(さくりつ)を以て切り抜けるのが最善だ、との結論になる」(産経新聞7月16日付)
 安倍政権の御用憲法学者で、日本会議理事でもある百地章・日本大学教授も朝日新聞にこう語っていた。
「明治の皇室典範をつくるときにこれまでの皇室のことを詳しく調べ、生前退位のメリット、デメリットを熟考したうえで最終的に生前譲位の否定となった。その判断は重い。生前譲位を否定した代わりに摂政の制度をより重要なものに位置づけた。そうした明治以降の伝統を尊重すれば譲位ではなくて摂政をおくことが、陛下のお気持ちも大切にするし、今考えられる一番いい方法ではないか」(朝日新聞7月14日付)
天皇が「お気持ち」で生前退位に反対する安倍政権や日本会議へ反論! 象徴天皇を強調して戦前回帰けん制も

「国体の破壊」などというアナクロニズムを、現在堂々と発言するのも驚きである。
百地章・日本大学教授は、集団的自衛権合憲説を唱えた例外的な学者(?)であるが、このような人たちと思考を一にしているのが安倍政権である。
⇒2015年6月23日 (火):不可解な百地章教授の憲法九条解釈/日本の針路(184)

小堀桂一郎や百地章などがリーダー的地位にある日本会議は、やはり亡国的だ。
⇒2015年12月26日 (土):日本をダメにする日本会議という存在/日本の針路(268)

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2016年8月13日 (土)

伊方原発3号機再稼働批判/技術論と文明論(62)

四国電力は伊方原発3号機を再稼働させた。
福島原発事故から何を教訓としたのか?
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東京新聞8月13日

福島第1原発事故から5年5カ月過ぎた。
依然として多くの人が避難生活を強いられており、収束のめどは立っていない。
東京五輪招致のため、安倍首相がコントロールされていると宣言した汚染水は深刻な事態のままである。

 福島第1原発建屋に滞留している汚染水問題で、原子力規制委員会の検討会は19日、早急に処理して量を減らすことを検討するよう東電に指示した。高濃度の放射性物質で汚染されており、再度の津波で流出すれば甚大な環境被害が生じることを懸念している。
 同原発1〜4号機の原子炉とタービンの両建屋には計約6万トンの水がたまっている。東電はポンプでくみ出し、技術的に除去が難しいトリチウム以外の放射性物質を取り除いた後に、別の場所に置いているタンクに貯蔵している。しかしタンクの増設が間に合わず大量に処理できないうえ、新たに地下水が流れこんでいるため滞留水が減っていない。東電は建屋を凍土遮水壁で囲うなどしているが効果は表れていない。
福島第1原発事故 滞留汚染水対策、東電に検討指示 規制委

山本太郎氏は以下のように言っているが同感である。

熊本地震の原因になった、日奈久断層帯と布田川断層帯は、国内最大級の活断層「中央構造線」の延長線上にあり、伊方原発もその近くに立地する。
断層帯が飛び火的に動く可能性もあり、熊本地震規模以上の地震が起こる可能性がある事は、皆さんご存知の通り。
それに耐えられる安全対策など、できるはずもない。
熊本地震で目の当たりにした家屋の倒壊、道路などの寸断。
事故が起こった際に被曝を避ける屋内退避や、車両による避難、バスでお迎えにあがります、という避難の想定事体がどれほど現実味がないか、子どもでも理解できること。
なにより、避難計画が成り立っていない事を、1番判りやすく示しているのが、伊方原発の西側、佐田岬半島の暮らす住民に対しての避難計画。
有事には、佐田岬から船で九州側に船で避難するという。
津波が来ている状況で、どうやって船で避難出来るというのか。
モーゼがやってきて海でも割ってくれるというのだろうか。
無責任を通りこして、おめでたい状況に陥っている。
避難計画でなく、現実逃避と呼ぶべきではないか?
大規模な震災、伊方原発に過酷事故が起こった場合、愛媛の人々のみならず、大分、高知、山口、 広島などの周辺自治体住民も、避難民になる恐れがある。
正気とは思えない

周辺自治体・住民の多くが避難について不安に思っているが、原子力規制委員会は、避難については審査しないし、かかわらない。
不安の生じるような場所には立地してならないのだ。

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2016年8月12日 (金)

ウナギの傾向と対策(2016年版)/日本の針路(286)

今年の「土用丑の日」は7月30日だった。
三島市はウナギの泥臭さを富士山の湧水で取り除いて提供することから、ウナギが名物食の一つになっている。
⇒2015年7月24日 (金):ウナギの傾向と対策(2015年版)/日本の針路(201)

しかしウナギが高騰していることから、最近は余りウナギを食する気にもならない。
「Wedge」の8月号が、『「土用の丑の日」はいらない』という特集記事を載せている。
「土用の丑の日」という業界最大のイベントが、密輸や密猟などの違法行為によって支えられているという。
ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたというニュースを聞いたのは5年ほどまえであろうか。
しかし絶滅が危惧されているのは、ニホンウナギに限らない。
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Wedge2016年8月号

シラスはマリアナ海溝で生まれて黒潮にのって日本にやってくる。
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同上

黒潮が日本にやってくる手前の台湾で、日本の養鰻業者が大量に捕獲する。
シラス価格の上昇は、ウナギの価格上昇になり、消費者が負担するのだ。
そろそろウナギ狂騒曲は終焉すべきではなかろうか。



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2016年8月11日 (木)

人口変化と地域スポンジ化への対応/日本の針路(287)

少子高齢化のトレンドは一朝一夕には変化しない。
現在の出生率、死亡率を基にすれば、2010年に1億28百万人余だった日本の人口は、2060年には87百万人弱まで減少すると推計されている。
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東京新聞7月23日

人口増大期には、都市空間が急速に拡大してきたが、今は高齢者施設が次々と作られている。
都市が拡大する過程では、無秩序に拡大するスプロール化が問題になった。
1968年に、新・都市計画法が制定され、開発を促進する地域(市街化地域)と原則的に開発を認めない地域(市街化調整区域)を線引きして対処してきた。
しかし結果的には都市化と共に、土地の細分化が進むことになった。

人口減少期への移行により、都市は細分化されたままで、密度が薄くなっていく。
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人口減少化における地域スポンジ化のモデリング

それぞれの所有者の事情に応じ、随時、売却されたり空き家になったりしていく。
すなわちスポンジ化である。
スポンジ化が進むにつれ、インフラ維持は効率が低下する。
そこでコンパクトシティという考え方が重要になってきた。
街の中心部に集中的にインフラ投資をして、周辺部からの移住を誘導するのである。
首都大学東京准教授の饗庭伸氏は『都市をたたむ  人口減少時代をデザインする都市計画』花伝社(2015年12月)で、人口減少社会における都市計画のあり方のキーワードとして「たたむ」を提起している。
「たたむ」の英訳は「shut down」ではなく、「fold up」、つまり風呂敷を「たたむ」の用法である。
いずれまた「開く」かもしれないというニュアンスが込められている。
可逆性をもった計画ということであろう。

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